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オピニオン

2009年3月

2009年は“苦”の年?

日本船主協会 常任理事
新和海運株式会社 代表取締役社長
筧 孝彦

 2007年2月号の本欄で、新造船の大量発注に対する懸念を書かせてもらった。幸いと言うべきか、その後も海運市況は高水準のまま推移し、当然のことながら、新造船の発注は右肩上がりで増え続けた。
 いつの頃からか、いわゆる「2010年問題」が喧伝されはじめ、先行きに不安を感じていた船社も一部にはあったであろうが、未曾有の好況が持続する中で、新規参入組を含め大多数の船社が発注を続けた結果である。
 しかし、昨年の秋から海運市況は暴落し、5年にわたった「海運ブーム」は終息局面を迎えた感がある。残ったものは大量かつ高価な船の群れである。海運市況暴落の直後から、変わり身の早い海外船社の発注分を中心に、新造船契約のキャンセルが相次ぎ、今も続いている。
 米国発の金融不安に端を発した世界経済の逆パラダイムシフトが進み、海上輸送需要が激減し、先行き不透明となる中で、オペレーターと言われる船社を中心に、過剰船腹の解消とコストの削減に躍起となっている。
 昨年から今日までの間に、海外船社の経営破綻が相次いでいるが、破綻に至らないまでも、船社の多くが、苦しい状況にあることは疑いの余地が無い。
 新造船の竣工とスクラップによる処分がどういうテンポでどのくらい出てくるか、また、輸送需要がいつ頃からどの程度回復するか、不透明な部分が多く、今後を見通すのは正直言って難しいが、船社にとっては当面厳しい局面が続くことを覚悟しなければならないであろう。
 私たち日本船社は、素材産業から始まって、あらゆる関連産業を擁している日本の海事クラスターに全面的に依存してきたし、その構造はこれからも変わらない。今年は2009年、“9”"のつく年は過去に良いことが無かったと言う説もあるが、このような時こそ、自助努力に加えて、これまで培ってきた信頼関係を礎として、関係者の知恵を借りまた相互の協力の下に、将来に向かって明るい展望を切り開いて行きたいものである。

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