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オピニオン

2009年11月

萬治隆生

国際船員労務協会の活動の紹介

日本船主協会 副会長
国際船員労務協会 会長
萬治(まんじ) 隆生

 現在の国船協加盟船社は95社、IBF適用船2012隻、その乗組員総数41,679人(2009年10月1日現在)となっています。
 乗組員の国籍別で見ますと、72.38%とフィリピン人が太宗を占め、次いで7.7%のインド人、5.51%の中国人そして4.92%のミャンマー人となっています。
 国船協は、日本商船隊のFOC船に乗り組む外国人船員の労務問題を扱う、国内唯一の団体であり、その活動として、

1.欧州系船員使用者団体であるIMECと、韓国船協と合同で船員使用者団体(JNG)を構成し、ITFとの労使協議会(IBF)において、FOC船に乗り組む船員の労働協約の設定(CBA)とそれに関連する事項の対処。
2.設定されたCBAに設置規定されている各種基金を使用して、日本商船隊に質の高い船員が安定的に供給される為の種々のサポートを行うこと。
3.加盟船社あるいは、船員のITFあるいは全日海に係る苦情処理


があげられます。
 最重要事項であるIBF関連の活動について紹介しますと、IBFが2003年に設立され、労働条件設定の考え方が、AB船員の賃金を基準として、各職の賃金が設定される、ABベンチマーク方式から、1船当たり23名乗り組みを基準として、船員の月例賃金と付帯費用に加え、各種基金の総額を意味する、トータルクルーコスト方式(TCC)となった事に加え、その協約の有効期間が2年となりました。
 過去の3回の交渉ラウンドでは、海運界の好況を背景に、運航船の増加によって船員の需給バランスが崩れ、実勢賃金が高騰している事を理由に、ITFの賃上げ要求が強く、JNG側は、その要求をいかに値切り、船主の負担増を抑えるべく知恵を絞る交渉となっていました。結果として年率5%超えるTCCの増額を容認する決着となっていました。
 しかし今回の第4ラウンドIBF交渉は、昨年9月表面化した金融危機に端を発した急激な世界経済の悪化を反映した海運の大不況を背景として、JNGは、TCCの10%減額の要求を表明しました。ITFの要求に対して、その要求の値切り交渉に終始する従来の受け身のパターンと異なる、今回のJNGの具体的な減額要求に対し、ITFは面食らうと同時に、これまで6年間継続したTCCの考え方そのものを見直す事を提案してきました。
 10月1日まで継続した厳しい交渉にもかかわらず、労使双方共通の土俵に上がる事が出来ずに、協約改定交渉は先送りとなり、結果として現協約を2010年12月31日までの1年延長し、その間に、共通の交渉土俵造りを目指すという結果となりました。
 次にTCC協約に規定されている基金についての取り組みを紹介します。
 協約により、TCCの16%までを基金部分に組み入れる事が出来る事になっています。
海運会社にとって、安全運航は至上命題であり、其れを達成するためには、優秀な船員を安定的に確保し運航船に配乗する必要があります。
 国船協は、この基金部分を計画的かつ有効に使用することにより、既存船員の資質の向上の為の種々のトレーニングと、フィリピンの海員組合と共同で海事大学の運営を始めとする若年船員の確保育成の為の色々なプロジェクトを実施しています。この様な各種のプロジェクトが成功し、訓練育成された船員を国船協加盟各社が有効に利用できれば、基金負担者である船社にとって、形を変えた還元となると考えています。
 今年から、これらの基金を使用して、日本人海技者確保育成の為のプロジェクトも始めました。これは船の安全運航の達成は船員に限らず、陸上にあって船の運航を支援する優秀な海技者の養成は不可欠であるとの認識に基づいたものです。
 国船協のメンバー95社の多くは人材派遣会社、船舶管理会社あるいは、小規模船主であり、それらが関係する船の多くは、いわゆる大手海運会社が運航しているという実態が有ります。これらの会社の運航船の安全効率運航は、間接的に大手海運会社の利益につながるという認識が必要であると考えています。
 最近の国船協の活動は、幅広くなり、船協との調整が必要となるケースが増えており、船協とのコミュニケーションを密に活動する事となります。          

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