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オピニオン

2010年10月

松山副会長

美しい地球を守るため

日本船主協会 副会長
新日本石油タンカー株式会社
代表取締役社長
松山 行宏

今年の6月、7年振りに地球に帰って来た小惑星探査機「はやぶさ」のカプセル回収のニュースは、我々日本人にとって久々に明るい話題として、各メディアに大きく取り上げられ、お茶の間を賑わせた。カプセルの一般公開には、夏休みの家族連れなど大勢の見学者が会場に詰めかけたという。「はやぶさ」が長い旅を終え、燃え尽きる直前に写した映像は、美しく輝く地球の姿であった。

「はやぶさ」が数多くのトラブルを乗り越えて地球に帰還した航海は、日本の持つ高い技術力とその底力を世界に知らしめた最高の機会でもあったと思う。

技術の進歩という意味では、船の世界も日進月歩の発展を遂げてきた。

人力のみで海を渡った時代から、帆船、蒸気船を経てタービン船、ディーゼル船と商船を動かす動力も技術革新により時代とともに変遷してきた。帆船の時代から見れば、機関を動かして船を動かすなんてことは想像できなかっただろう。

今から100年後にどんな船が運航しているか思いを馳せると、宇宙を巡る豪華客船など手塚治虫の世界も近い将来のことのように思える。

近年は、海洋汚染に加え、排気ガス規制やCO問題など、地球への負荷に対する規制がクローズアップされてきている。昨今の船舶に関する条約の中でも環境に関する規制の動きは著しく、MARPOL条約における船舶からの大気汚染防止のための規則、バラスト水管理条約、シップリサイクル条約、地球温暖化防止条約などに基づく設備要件は多岐にわたる。

日本船主協会は国土交通省との連携を密にして、国際海運における温室効果ガス(GHG) 削減に向けた船舶のエネルギー効率の改善や減速航行、燃料課金制度など日本国提案の作成や先進国シップリサイクルシステムにおけるパイロットモデル事業へ全面的に協力しているところである。

一方で、ルールに対応した具体的な装置や商品の開発には、関係業界の協力が欠かせない。例えば、プロペラ効率向上への工夫や低摩擦船底塗料の開発、また、最近注目されているバラスト水処理装置の実用化やソーラー発電機、環境に配慮した機器を載せたエコシップの開発等は、いずれも船づくり、モノづくりに永く携わった日本の高い技術と知見が求められている。

いまや海運界に大きな影響をあたえる環境問題の解決には、環境技術で世界を一歩リードしている日本を中心に、海運業界と造船業界がひとつになって、実用化に向け積極的な取り組みが必要だ。

青い海の恩恵をこうむる我々が地球へできる恩返しとして、この解決をはかることは最優先の課題である。

かつて、ソ連とアメリカの宇宙飛行士しか見ることができなかった宇宙からの地球は、いまや日本や中国など様々な国籍の宇宙飛行士も見ることができる。いつかは宇宙飛行士だけではなく、地球上のみんなが青く美しく輝く地球を宇宙から眺めたいものである。

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