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オピニオン

2012年1月

宮原耕治

2012年を迎えるにあたって

社団法人 日本船主協会
会長  芦田 昭充
2012年の年頭にあたり一言ご挨拶申し上げます。

昨年は、東日本大震災により甚大な被害に遭われ、また、その後の放射能汚染の影響もあり、今も我が家に戻れないなどの不自由を強いられている被災者の方々が数多くおられます。一日も早い復興を心よりお祈りいたします。


さて、昨年はわが国海運業界にとってたいへん厳しい一年でしたが、これは、アルファベットでいえばAからGの全てが一度に起こった結果といえます。Appreciation of Yen(円高)、Bunker price hike(燃料油価格の高騰)、Capacity oversupply(船腹過剰)、Disaster(自然災害)、Economic slowdown(経済成長の鈍化)、Financial crisis(金融危機)、Giant players’ misbehavior in container sector(巨大コンテナ船社問題)がそれです。

このうちいくつかのファクターは既に改善に向かっていますし、あのような自然災害は二度と起こってほしくはありません。とはいえ構造的な問題はある程度続くことを覚悟して、各社が経営に当たっていく必要があるのでしょう。わが国外航海運企業にとっては、まさに正念場の年になるものと思われます。

 

このような状況下、昨年の税制改正要望で、わが国外航海運の悲願であったトン数標準税制の拡充が認められ平成25年度から適用されることになったことは、明るい話題でした。昨年、日本船主協会の会長に就任した際、活動の最重要課題を「海運界のTPP」として発表いたしました。その中で、トン数標準税制の拡充はまさにトップバッターにあたります。これが実現したことはまことに喜ばしい限りで、これによって、わが国外航海運の国際競争条件が諸外国に一歩近づくことが期待されます。前提となる海上運送法の改正等が円滑に進むよう、取り組んでまいります。

この要望に当たって当協会は、外航海運が日本の経済成長や非常時を含む経済安全保障に果たす役割を、意見広告等を通じて強く訴えてきました。幸いにして国民の皆様および国会議員の先生方の深いご理解を得、国土交通省当局の多大なご尽力もいただき、今回の結果となりました。また、経団連並びに造船業界等にもご理解とご支援をいただきました。この場をお借りし改めて皆様にお礼申し上げるとともに、日本海運が引き続き世界的な競争の中で確固たる地位を占め、わが国およびわが国経済に貢献できるよう努力してまいりたいと存じます。

 

翻って「海運界のTPP」の2番目の課題、ソマリア沖・アデン湾の海賊問題については、残念ながら昨年は対策に大きな進展は見られませんでした。もとよりわが国をはじめ各国には懸命な護衛活動を実施していただいており、昨年7月にはジブチに自衛隊初の海外拠点が開設され、より効果的な活動が期待されているところです。しかし、海賊事件発生海域は護衛が及ばない海域にまで広がり、発生件数も増加しており、非常に危惧すべき状況が続いております。

海運業界といたしましては、自衛のためのあらゆる対策を講じているところですが、その対応には自ずと限界があります。特に、武器の持ち込みを禁止されている日本籍船につきましては公的武装ガードの乗船を政府にご検討願っており、今年は是非これが実現するよう切望いたします。

 

水先制度改革も最重要課題の一つです。戦後日本海運が幾多の試練にもまれながら変化し、これを取り巻く制度も変わってきた中で、水先制度だけが大きく変わっていないのは奇異とすら言えます。本年4月から適用されることとなる水先料金の上限認可額の改定の機をとらえて、改革に向けた協議を進めてまいります。これに加え、外航海運における温室効果ガス(GHG)削減、日本人海技者(船員)の確保・育成、IFRS(国際会計基準)への対応もしっかりとフォローアップしてくべき課題であり、以上に述べてきたような諸課題に取り組むため、引き続き広報活動にも力を注いでいく所存です。

 

最後になりましたが、わが国の産業基礎物資の約8割を輸送し、先の大震災では救援物資の輸送で重要な役割を果たした内航海運については、かねてより船腹の過剰、船員の不足と言った問題や、カボタージュ制度の堅持などの課題があります。当協会は、日本内航海運組合総連合会と協調して、これらの問題に対処してまいります。

 

本年も皆様からのご指導、お力添えを賜りますようお願い申し上げます。

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