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2012年6月

中本光夫

独禁法適用除外は堅持

日本船主協会理事長
中本 光夫

2011年は、外航海運にとって歴史に残る厳しい年となった。そんな中で、明るい話題は、トン数標準税制の拡充が認められたことと、独占禁止法(以下、独禁法という)の適用除外制度が平成27年度に再検討との条件付きで公取のお墨付きをもらったこと、が挙げられる。

独禁法適用除外問題については、2006年に公正取引委員会から適用除外廃止の方向での整理を求められ、当時の与党の自由民主党の先生方に説明し、その必要性が認められた。今回は民主党政権下で見直し対象とされたものであるが、適用除外制度を存続すべきとの判断が再度下された。

アジアの各港間での激しい競争がある中で、また欧州以外の各国が適用除外制度を維持している状況下で、(1)日本が他国に先駆けて適用除外を外せば、日本マーケットだけが運賃の乱高下を起こし、船社の安定的なサービスの維持ができなくなり、日本パッシングを助長することになる、(2)荷主も日本船社を評価しており安定的なサービスを必要としている、(3)米国を中心に外航海運の独禁法適用除外制度は時代に対応して変化している、等が当方の主張である。

思い起こせば、1984年、1998年の米国海運法の改正で、サービスコントラクトの締結、非公開の容認等船社間の競争を激化させる措置が導入され、結果として、米国のコンテナ海運会社がすべて淘汰され、邦船社も外航コンテナ船社は3社に絞られるなど世界のコンテナ船社の集約が進んだ。

そして、米国は適用除外を制度として残したが、EUは2008年に独禁法の適用除外制度(コンソーシアムは容認)を廃止した。この背景には、欧州のコンテナ船社はM&Aなどにより単独で企業規模を拡大し、次々に大型船を投入するなど輸送力を増強し、市場の寡占化で勝ち残りを目指す動きがある。2010年には欧州の上位3社で世界市場の35パーセントのシェアを占めている。

しかし、冒頭に述べた2011年は欧州経済の停滞などにより、欧州船社を始めとする世界のコンテナ船社は、供給過剰からくる運賃の下落、大幅な経常赤字に呻吟することになる。世界の航空企業がジャンボ機の投入などによるシェア争いのはて、9.11以降の経営環境の激変に耐えられず次々に倒産し、再生を余儀なくされたことは記憶に新しい。

今後世界のコンテナ船市場がどう変わるのだろうか。発展途上国の成長に支えられて市場は拡大する方向にある。しかし、100パーセントに近い形で寡占できない限り、過大投資は必ずツケが来る。安定的なサービスの確保のほか資源の効率的活用、環境への配慮といった観点からも需要に適合した投資が行われるべきだ。

現在、(公財)日本海事センターにおいて、荷主サイドを含め産学官一体となって勉強会が継続されているが、各国の独禁法政策の動向とコンテナ市場との関係については、しっかりとフォローしてもらいたい。

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