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オピニオン

2013年9月1日

加藤木副会長

環境問題と海運

日本船主協会 副会長
JX日鉱日石タンカー 代表取締役社長
加藤木 覚

今年は記録的な大雨が全国各地で多発しており、連日のように報道されている。8月には、秋田県鹿角で、わずか数時間で平年の8月の降水量の2倍に相当する記録的な大雨となった。また、都市部でも「ゲリラ豪雨」と呼ばれる集中豪雨が発生し、7月には東京で1時間に100ミリを超える滝のような大雨を記録したが、8月になっても収束する気配を見せていない状況である。
 省庁の2012年度版レポートを見ると、年間降水量は大きく変動している。日本では1970年代以降、年ごとの変動が大きいものの、大雨の年間日数に増加傾向が現れているそうだ。さらに、日本の年間降水量は、今世紀末には20世紀末に対して平均5%程度増加し、中でも1時間の降水量が50mm以上に達するなど、極端な降水現象の頻度の増加が予測されている。
 そしてそのような大雨をもたらす気候変動の要因の一つは地球温暖化にあると見られており、主な原因は、人間活動により発生する二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガス(GHG)の増加であることが確実視されている。また、CO2の濃度は、過去最大のものとなっているという。
 日本船主協会ホームページに掲載されているとおり、この地球温暖化問題に対する外航海運の取り組みとして、船舶からのGHG 排出抑制に向け国際海事機関(IMO)を通した検討が進められている。
 船舶からのGHG 排出抑制策については、今年から技術的手法であるエネルギー効率設計指標(EEDI)等の強制化が開始されたが、この制度化にあたっては、日本船主協会も日本政府と協力し、船舶データの提供等、導入に向け積極的に参画した。産官一体となって臨んだ結果、業界にとって歓迎すべき規制採択となった。今後は、経済的手法についてIMOで引き続き検討が進められることとなる。
 しかしながら、我々海運業界をとりまく環境問題は、この他にも、船舶からの廃棄物処理、船体付着物の移動、大気汚染防止、シップリサイクル等多岐にわたるが、日本船主協会でもわが国政府等と緊密に連携して取り組んでいるところである。
 昨年もこの「オピニオン」投稿で申し上げたとおり、私たち海運会社が環境問題についてきちんと対処していかなければ、我々が担っている“海のパイプライン”としての役割を、安定して継続的に果たすことが出来なくなることも十分に考えられる。
 JX日鉱日石タンカーでは、毎年全国で海上従業員の「家族懇親会」を開催しており、私もご家族の方々と親睦を深めるため、全国の開催地を訪ねているが、とりわけ、家族と離れ、洋上勤務する海上従業員にとって、ご家族が災害を被ることなく安穏に暮らしていることは、そのまま、安心して船の運航業務に携わることにつながる、と感じる。そのためにも、環境問題へきちんと取り組み、自然災害をいかに防ぐかを考えることが大切である。

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