2013年12月1日
「時限立法という不可思議」
日本船主協会 常任委員乾汽船 代表取締役社長
乾 新悟
「特定資産の買換特例」、いわゆる「圧縮記帳制度」がまた延長されようとしている。言うまでもなく我々の興味の対象は船舶の買換えに他ならないが、ふと興味を持って他の対象が何かと見てみると、
(1) 移転促進のための土地を中心とする買換え
(2) 誘致促進のための土地を中心とする買換え
(3) 既成市街地等内での土地の有効利用のための買換え
(4) 農用地区域等内での土地の有効利用のための買換え
(5) 防災の観点から街並みの整備を促進するための買換え
(6) 土地流動化促進等のための買換え
と、土地に関連するものが主である。これに、
(7)日本船舶同士の買換え
が加わっているのだから面白い。
本邦税法の歴史を紐解くと、「圧縮記帳制度」そのものは戦前から税制上の措置として存在した。また、現行の特措法に基づく買換特例の対象として「日本船舶同士」が加えられたのが昭和49年の税制改正であり、その後、多少の変遷は有れど今日に至っている。
また前述の通り、土地に関連するものが買換え対象の主体となっているのは、昭和38年度に創設された「圧縮記帳制度」の買換え対象の範囲があまりにも広すぎて、昭和45年からは、土地政策または国土政策に合致すると認められる買換えに限って特例を認める、とされたためであろう。
その昭和40年代と言えば筆者が生まれた頃であり、当然当時の船協の活動がどうであったかは知らない。しかしながら、この「日本船舶同士の買換え」を認めてもらったことが、当時の海運業界諸先輩方の相当の努力の賜物であろうことは想像に難くない。先人には敬意と感謝をここで表したい。
ところで、昭和49年に「日本船舶同士」が買換特例の対象になって以降、「時限立法」の形で制度が延長されている事はご承知の通りである。過去これだけ期間継続している制度が何故いまだに「特別な措置」のままで「恒久化」されないのか不思議極まりない。
我ら日本船主は、本制度が永続することを前提として投資行動を行っているのが実際である。船舶「圧縮記帳制度」の「恒久化」の実現は、我々の将来の見通しに大いなる安心感を与える、と言ったら言い過ぎか?立法や行政も都度の手が多分に省けて、官の合理化にも役立つと思うのだが。