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オピニオン

2014年5月1日

諸岡

「枠組」作りと
「資金」集めが上手な欧米人

日本船主協会 常任委員
NYKバルク・プロジェクト貨物輸送 代表取締役社長 諸岡 正道

ひょんなことから国際海運会議所(ICS)の会長を引き受けて、はや2年が経とうとしている。最初は一体どうなることかと心配したが、ロンドンのICS事務局、日本船主協会、出身会社の日本郵船のご支援、ご指導を得てここまで何とか凌いできている。この仕事の特徴は、ICS理事会や年次総会の議長を務めるだけでなく、世界各地で開かれるコンファレンス、セミナー、トレードショーなどでスピーチをしたり、パネリストとして意見を述べたりする機会が多いことである。国際海運業界のロビー団体として活動する際、このような機会に発言することは大変重要である。

一方、様々な国際会議に参加することにより、個人的には見聞を広げる機会に恵まれるし、また多くの知らない人たちとの出会いがあるわけだが、気が付くと何時も同じ人たちが其処にいる。船会社の幹部、政府関係者、各種ロビー団体、船級、保険、弁護士、金融機関等海運と海運を取り巻く政府や業界の関係者たちだが、その多くは欧州人(特にアングロ・サクソン)である。日本人に出会うことはめったにない。皆社業が忙しいのか、余り興味がないのか、多分両方の理由からだと思うが、私もICSの会長でもなければわざわざ出向いてはいかないであろうから、何となく納得できる。IMOの場では、関水事務局長が日本人であることと、日本政府のリーダーシップもあり、日本のプレゼンスは大きい。然し、IMOの外の世界では日本を含むアジアの声は必ずしも大きくない。言葉の問題もあるが、それだけではなさそうだ。

2月にサンフランシスコの郊外で開催された World Ocean Summit なる国際会合に呼ばれた。この会合は雑誌「エコノミスト」が「ナショナル・ジオグラフィック」と共催したもので、第2回目だそうだ。海洋は誰のものか、漁業や海洋資源をどう守るのか、海洋汚染を如何に防いでいくのか、テーマは大きく課題も山積だ。

国連海洋法条約(UNCLOS) は、海洋における船舶航行の自由、また領海や排他的経済水域等の定義付けを行っているが、資源保護や環境保全に関してまでは規定していない。この会合には、国連や各国政府関係者、環境団体NGO、企業、業界団体等から様々な人たちが3百人程集まったが、日本人は私を含め二人であった。米国で開催されたこともあり、当然米国人が多いと思われるが、欧州からの出席者も多い。英国王室のチャールズ皇太子がビデオで登場し、米国ケリー国務長官がやはりワシントンから中継で基調演説を行うなど、欧米の力の入れ方には並々ならぬものがある。中国外務省も次官補級の外交官が出席し、海洋権益に関する同国のポジションを述べていた。この場で議論されていることは、海洋に関するガバナンスであり、目論まれていることはそれを条約化する為の枠組み作りであり、また将来の統治機関である。

国や企業を含め様々な利害関係がある中で、このテーマを纏めていくには息の長い不断の挑戦が立ちはだかっているが、「枠組」作りと「資金」集めに長けた欧米人が引っ張っていく構図は何時もの通りである。我々日本人を含めアジア人は受動的に対応する結果、出来上がった「枠組」への参加が求められ、同時に「資金」を供給することが求められるお決まりの道筋が待っている。そろそろこの構図を変えるべく、一石を投ずるべき時が来ているのではないかと個人的には思うが、どうすればよいのか。キーワードは「人脈」作りだと思う。ではどうやって「人脈」を作るのか。まず軽いフットワークで各種国際会合に出来るだけ参加して、練習する処から始めるしかなさそうだ。継続が力となって、何時の日か自然と「作る側」「集める側」になれたらとよいなと考える。

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