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オピニオン

2014年8月1日

武藤副会長

クールビズ再考

日本船主協会 副会長
商船三井 代表取締役社長
武藤 光一

今年はエルニーニョ現象の影響で冷夏とも言われていたが、5月末から真夏日があり、例年通りの蒸し暑い日々が続いている。もわっとした熱気の中に身を置くと「日本は亜熱帯化しつつある」との実感を持つが、クールビズについて考えが及ぶ。日本のクールビズは定着してきてはいるが、まだその位置づけが中途半端。もう少し推し進めて夏の正装とできないものか。クールビズが推奨されている時期でも、ビジネスの会合などに出席するときには「上着、ネクタイは着用か」が気になることが多く事前に相手に確認したりするが、日本の夏の気候に合わせた軽装を「正装」としてしまえばそんな気苦労は発生しない。

海外に目を転じると、東南アジアはそれぞれの土地の気候に合わせた涼しい正装がある。ハワイでのアロハシャツ、フィリピンでのバロン・タガログなどで、彼らは地元での公式の集まりでもその服装で通す。アロハシャツは地元の気候に適した服装の典型だと思うが、もともとは日本の着物の美しさに惹かれた現地の人が「着物をシャツにしてくれ」と頼んだのが起源という説もある。

明治とか大正時代には夏の正装というのはあったのだろうか。記憶を遡ると、私が入社して間もない1979年の第2次石油ショック後、大平内閣が半袖スーツの省エネルックを提唱したことを覚えている。これはほとんど浸透せず、1994年に羽田首相が再び半袖スーツを愛用したが、これも一時的に話題になったがやはり普及しなかった。そして2005年に公募で「クールビズ」と命名されてから10年が経つ。

今のビジネスの場における「正装」は日本では歴史のあるものではないはずで、西欧からの輸入だろう。冷房機器のない時代は、「開襟シャツ」的なものが許されていたかもしれない。より柔軟な、あるいは実用的な発想に戻ればいい。民間の発意も重要だが、公的な行事にも影響するので政治の側でもさらに進めてもらうべく省庁を超えた横断的な組織で取り組むのも一案か。

ここで横断的組織を持ち出したのは、今の取り組みが環境省主導のため「冷房時の室温28度でも過ごせる」といった省エネ推進の意識から抜けないとの思いからだ。日本の蒸し暑い風土を前提に自然体で考え、文化的側面も考慮する。わが国でも、沖縄ではかりゆしウェアが認められているが、これは昭和45年ごろから導入されたとのことで、歴史が浅いためか全国的には認知されていない。日本は南北に長く、沖縄と北海道では事情は異なるが、今年は6月初旬から北海道でも30度を超える日があった。今年も暑くなるであろう。よって、日本全体で共有する夏の正装があると便利だ。

天皇陛下の御前でも受け入れられる夏の正装を確立すれば、通常のビジネスの場は勿論のこと、日本を舞台とする外交の場でも一般的となる。海外からの招待客にも感謝されるだろう。

一つの雛形として、日本に由来があるかもしれないアロハと沖縄のかりゆしに近いシャツのようなもの、6年後の東京オリンピックではこれで各国の選手、来訪者のおもてなしをしたい。

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