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オピニオン

2016年1月1日

工藤会長

2016年新春を迎えて

一般社団法人 日本船主協会
会長 工藤 泰三


新年あけましておめでとうございます。
2016年の年頭にあたり一言ご挨拶申し上げます。

 昨年は、米国や欧州では緩やかな景気回復が続き、欧州も、やっと回復の兆しが見え始めましたが、中国をはじめ多くの新興国では景気の減速感が鮮明になりました。海運市況においても、円安の進展や、燃料油価格の下落という追い風はあったものの、新興国の減速の影響を大きく受けドライバルク船市況は極端に低迷し、コンテナ船も欧州航路等で荷動きが落ち込むなど、総じて厳しい環境となりました。

 この様な厳しい国際競争の中でも日本の船社は日本経済の基本的なインフラとしてその使命を果たすため、輸送サービスの改善などに必死に取り組んでおります。しかし、経営努力が及ばないところで確実に影響が表れてくるのは、税制をはじめとする国固有の制度の違いです。私どもはかねてより諸外国の企業と同じ土俵で戦わせてほしいということを申し上げてまいりましたが、なぜそれが必要なのかについて広くご理解いただかねばなりません。このため、海運産業がわが国にもたらす利益やマーケットの特性、諸外国の海運政策などを踏まえ、わが国外航海運産業および日本商船隊の国際競争力の強化を国家戦略の最重要項目のひとつとした上で、具体的な政策を検討すべきとの提言を取りまとめ、関係方面に説明いたしました。

 その上で、今年度末に期限を迎える「国際船舶に係る登録免許税の特例措置」の改善・延長を要望いたしておりましたところ、お陰様で、これをお認めいただきました。国会の諸先生方、国土交通省の皆様のご理解・ご支援に厚く御礼申し上げます。2016年度末には「船舶の特別償却制度」および「船舶の買換特例」、2017年度末には「トン数標準税制」も期限を迎えますが、これらは海運にとって極めて重要な税制であります。本年はその維持・改善実現を上で述べた提言をもとに強く訴えてまいりますので、引き続きよろしくお願い申し上げます。

 一方、船舶の航行安全に目を転じると、世界各地における海賊の脅威が続いております。凶悪な海賊事件への対応・抑止のため、海上自衛隊の護衛艦2隻がアデン湾に派遣され、各国艦船とともに護衛活動が展開されています。私は商船の護衛に奮闘されている自衛官・海上保安官の皆様や活動を支援する日本大使館に感謝申し上げるため、昨年10月に活動拠点であるジブチを訪問しました。任務にあたる皆様の強い使命感を目のあたりにし、大変勇気づけられました。あらためて深く感謝申し上げます。

 環境問題も、海運業界にとって大きな命題の一つです。地球温暖化やバラスト水管理に対する取り組み、更にはSOxやNOx、シップリサイクルなど様々な環境問題への的確な対応が求められています。このうち、地球温暖化防止対策については、昨年12月の国連気候変動枠組条約(UNFCCC)第21回締約国会議(COP21)において、GHG削減に取り組む新たな法的枠組みである「パリ協定」が採択されました。国際海運については、事実上これまでどおりIMO(国際海事機関)においてGHG削減対策が検討されていくことになるため、今後はIMOでの検討が加速されるものと思われます。国際海運に係る各種の環境対策が実効を上げていくために、地域独自の規制などによらない国際的なルールが構築されるよう、引き続き積極的にサポートしていく所存です。

 また、海運産業は、国民の生活および産業を支えるインフラとして極めて重要な産業でありながら、B to Bの事業であるため、一般の方の目に触れることが少なく、その重要度に比べ、概して国民の皆様の認知度が低いことも、諸課題解決の妨げの1つになっているのではないかと思われます。このため、海運界として、昨年に引き続き本年も認知度を少しでも高めていく活動を継続して行っていくとともに、学校教育においても海運を含めた海事産業全体の重要性について取り扱われるよう取り組んでまいりたいと思います。

 さらに、後継者不足は内外航にとどまらず、水先人をはじめ海事産業界全体に拡大しております。わが国の円滑な物流に支障が生じないよう、この問題にもしっかりと取り組んでまいります。

 これら諸課題解決に全力で取り組み、わが国海事産業全体が元気になるよう努力していきたいと思いますので、本年も皆様のご指導、お力添えを賜りますようお願い申し上げます。

以上

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