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オピニオン

2017年2月1日

小比加副会長

内航海運の現況と将来に向けて

日本船主協会 副会長
東都海運 代表取締役社長
(日本内航海運組合総連合会会長)
小比加 恒久

平成29年の正月は穏やかな天候に恵まれ暖かい年明けとなりました。これから起こるかもしれない「嵐」の前の静けさのようです。
 前回(2016年2月)に寄稿させて頂いて丸1年が経ちましたが、その時の内容を読み返してみてびっくりするほど、1年前と変わっていないと感じてしまいました。第2次安倍内閣発足から丸4年余りですが、円安と株価回復はありましたが、内航海運業界には1年前と同様に景気回復の実感はありません。
 例えば①日本内航海運組合総連合会が主要元請オペレーター60社を対象に行っている月次の輸送量調査での、昨年10月時点での直近1年間(2015年11月~2016年10月)の輸送量は、油送船の前回(2014年12月~2015年11月)は前年同期比並みであったのが、今回は前年同期比98%、貨物船は前回も今回も前年同期比96%と減少しました。②2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控えて旺盛な荷動きが期待され続けていますが、計画の見直し等もあり中々具体的な動きになりません。
 昨年を振り返りますと、4月に熊本地震、自動車の燃費データー不正、5月にオバマ大統領の広島訪問、6月はイギリスの国民投票によるEU離脱、7月に小池東京都知事の誕生、8月は築地市場の豊洲移転延期、リオオリンピック、台風10号被害そして11月にアメリカ次期大統領にトランプ氏の当選、韓国朴大統領辞任表明と次から次へと想定外と思える事が続きました。想定外と考える自分が間違えているのかとさえ思います。
 内航海運業界を取り巻く環境は、今後厳しいものとなっていくと思われます。①人口減少(少子・高齢化)による国内貨物輸送量の減少と船員不足②船舶の老齢化と代替建造③益々厳しくなっていく環境問題④産油国の減産合意による今後の燃料油価格の推移等々あります。
 平成10(1998)年から開始した「内航海運暫定措置事業」も昨年度から新たなスキームとなり平成36(2024)年度を目途とした終焉に向け順調に推移しています。
 昨年の4月から開始された、国土交通省、荷主、有識者、金融機関、造船、事業者等での「内航海運の活性化に向けた今後の方向性検討会」では業界にとっても新たな切り口となる議論が進んでいくと思います。ここ数年の間にはポスト暫定の議論も始まるでしょうし、将来的には、AIやビッグデーター、ロボット等の活用、舶用機器等の進歩もあるでしょうから、そうした組み合わせにより内航海運業界も変わっていくと思われます。

以上

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