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オピニオン

2017年6月1日

小野理事長

新しい小・中学校学習指導要領

日本船主協会 理事長
小野 芳清

小・中学校の授業は文部科学大臣が告示する「学習指導要領」に則って行われます。私も小・中学生時代に「日本は加工貿易国である」ことを繰り返し教えられたことが今でも頭に残っていますが、これも学習指導要領のなせるわざの一つです。
 この学習指導要領が本年3月31日付け告示で改正され、改正後の新要領は、小学校では2020年度から、中学校では2021年度から全面実施されることとなりました。
 これに向けて、①まずは本年夏を目途に「学習指導要領解説書(教科書執筆や学校現場での対応のガイドラインとなる、要領本体の内容を具体的かつ詳細に解説した文書)」を文科省事務方が作成のうえ初等中等教育局長名で公表し、②それに基づき各教科書出版会社が新教科書をおそらく本年中に執筆し、③2018年度(小学校用)及び2019年度(中学校用)に教科書検定を受け、④2020年度以降に学校現場で検定済の新教科書の使用が開始される、という段取りになると聞いています。
 今回告示された「新要領」には、「貿易や運輸は、・・工業生産を支える重要な役割を果たしていることを身に付けることができるよう指導する。」(小5社会科)や「・・陸上、海上輸送などの物流や人の往来などを基に、・・日本と世界との結び付きの特色を身に付けることができるよう指導する。」(中学社会科)等の記述が見られ、わが国にとっての海運の重要性を学校現場で従来より取り上げ易くなる方向のものになっています。
 このような結果に辿り着くまでには、関係者の並々ならぬ努力がありました。今回の一連の調整の発端は、2015年9月の海事関係7団体と超党派の海事振興連盟の先生方による文部科学大臣への陳情でした。その後も海事振興連盟・赤池誠章先生(参議院)を中心とした関係7団体による勉強会を何回も行い、その活動の一環として文科省が昨年秋以降に行った「新要領」に係る2回にわたるパブリックコメントに海事関係者が挙って意見を提出しました。これらの活動に多大な寄与をされた多数の皆様に心から感謝申し上げる次第です。
 今後は、「解説書」に適切な文言が盛り込まれるよう調整を継続するとともに、各教科書執筆者に海運をしっかりと理解していただき教科書に実際に反映していただけるよう、全力投球する必要があります。上述したスケジュールからすると、これらの取り組みは本年中が勝負になります。さらには、各地の教育委員会や社会科の先生方にも海運をもっと御理解いただくことが必須です。これらの作業は、産業界として総力戦で臨まなければ結果は出ないと思われます。産業界の長年の懸案を解決するまたとないチャンスですので、日本船主協会を含む関係7団体事務局が全力を尽くすのは当然として、会員各社におかれましても事柄の重要性を御認識いただき、全面的に御協力を賜りますよう、切にお願い申し上げる次第です。

以上

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