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オピニオン

2017年11月1日

国際船員労務協会の活動

日本船主協会 副会長
国際船員労務協会 会長
赤峯 浩一

1980年1月3日、幼い頃からの夢であり目標であった外航船の航海士として、当時邦船6社が配船する北米PNW航路のフルコンテナ船氷川丸に初乗船した。船長以下約30名の乗組員は、全員日本人船員だった。資料によれば、当時の日本商船隊約2,400隻、内日本籍船約1,200隻、外航日本人船員約41,000人とある。以来、円高になると、コスト差から外国人船員との競争、そして、近代化船のトライ、それでも勝てず、緊急雇用対策へ進み、日本人船員は激減し、40年近く経った現在では約2,000人強となった。

 こんな時代を航海士、船長として過ごしてきた私が、本年6月に国際船員労務協会会長に就任した。妙な巡りあわせというか、不思議な感じがする。外航日本人船員や海技者について、思うところを語りたい気持ちもあるが、今回は、この場をお借りして、国際船員労務協会について紹介したい。

 国際船員労務協会(以下、国船協)は、船舶所有者または船舶所有者に代わって船員配乗業務を行う日本法人92社で構成されている団体であり、このうち約30社は日本船主協会のメンバーでもある。日本商船隊約2,450隻の内、日本籍船約200隻を除く、FOC船約2,250隻が国船協に登録されている。

 活動の柱は二つ。一つ目は、これらの船舶に乗り組む外国人船員の賃金や労働条件について、日本船主を代表し国際運輸労連(ITF)や全日本海員組合(JSU)、フィリピン船舶職員部員組合(AMOSUP)などの関連労働組合と労使交渉を行うことである。
 現行の労働協約は2017年末に失効するため、昨年末より2018年1月以降の労働協約改定交渉(IBF交渉)を行っているが、本年7月に行われた直近の交渉では、ITF要求にある船員による港湾荷役に関する議論及びわれわれの要求にある船員福利基金に関する議論が平行線を辿り、船員の賃金を含め合意に至らなかった。そのため、年内における2018年以降の労働協約締結は難しい状況であるが、昨今の厳しい外航海運状況を踏まえ、少なくとも2018年の賃金UPを抑えるべく努力していきたい。

 活動のもう一つの柱は、労使で合意された基金を利用した外国人船員の福利厚生の向上と教育訓練の企画・管理・運営である。約2,250隻に約45,500人の外国人船員が乗船しているが、約75%がフィリピン人であり、次に多いインド人でも約7%に過ぎず、フィリピン人を中心に活動を行っている。

 現在フィリピンで進めている教育訓練活動として、練習船「オカ号」(旧航海訓練所練習船青雲丸)の代替船建造、総合トレーニングセンターの整備、アジア太平洋海事大学(MAAP)の改革がある。
 この中で、具体化しているのは練習船の代替船建造である。AMOSUPが所有する「オカ号」の老朽化が進んだため、現在は安全性の問題から乗船実習を中止しているが、代替船が必要との関係者認識の下、2018年末の新造船竣工を目指している。これ以外の案件については、具体化した時点で別の機会に改めて紹介させて戴く。

 国船協として、これらの活動を透明性、公平性を確保しながら、スピード感を持って精力的に進め、日本商船隊の安全運航、競争力の確保に寄与出来ればと思っている。

以上

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