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オピニオン

2018年1月1日

武藤会長

2018年新春を迎えて

一般社団法人 日本船主協会
会長 武藤 光一


新年あけましておめでとうございます。
2018年の年頭にあたり一言ご挨拶申し上げます。

 昨年の世界経済は、一昨年半ばからの景気回復基調に力強さが増し、地政学的・政治リスクによる先行きの不透明感はありましたが、世界の貿易量の伸びが経済成長率を下回る現象、所謂スロートレードからは脱却できたようです。これは、コンテナ荷動きの回復や中国の資源輸入量の伸びなどによるもので、2018年以降についても堅調な貿易量の伸びが見込まれています。また、わが国においても、海外経済の回復を背景とした輸出の伸びなどが景気の緩やかな回復をもたらし、海運業界においても、コンテナ船やドライバルク船の市況が最悪期を脱するなど、ようやく薄日が差してきました。

 明るい兆しが見えてきたとはいえ、海運業界には重要課題が山積しており、昨年6月の日本船主協会会長就任以来、わが国海運のさらなる発展に貢献すべくこれまで取り組んでまいりました。

 厳しい国際競争の中で「インフラ産業のインフラ」として国民生活や経済活動を支えている日本の海運が健全であり続けるためには、経営環境の整備、特に世界と同等の条件下で競争できるイコールフッティングの実現が重要です。その一環として、平成30年度税制改正に向け、「登録免許税」「固定資産税」の特例措置の延長について、国土交通省と緊密に連携し、関係各方面へ要望した結果、何れもほぼ要望通りの内容で延長が認められました。これも、国会の諸先生方、国土交通省はじめ関係省庁の皆様のご尽力の賜物です。また、造船業界や経団連をはじめとした関係者の皆様からも多大なご支援をいただきましたことを、この場をお借りして心から厚く御礼申し上げます。
 また、再拡充された「トン数標準税制」については、本年4月より適用開始となりますので、円滑な実施に向け、引き続き関係の皆様のご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 さて、これら経営環境の整備をはじめ、当協会の基本活動として取り組んでおりますのが海運の重要性に関する国民の認知度向上です。昨年の夏も例年通り「船ってサイコ~」と題し、商船の一般公開をはじめとしたイベントを全国各地で展開しました。複数のイベントで募集人数を大きく上回り、約5,000人の皆様に船に親しんでいただくことができました。

 また、学習指導要領の改訂を契機に、日本における海運の重要性が授業や校外学習で扱われるよう、商船の見学会や教育関係者や教師・児童との交流などに業界を挙げて注力してまいりました。
 このような活動は継続していくことが重要です。本年も次世代を担う子供たちに海運の重要性を理解してもらえるよう、海事産業界が一丸となり、あらゆる機会を通じて広報活動を展開してまいります。

 昨年は、船舶に関連する環境規制として、バラスト水管理条約が9月に発効しました。バラスト水処理に係るデータの収集・分析は本年から始まりますが、船舶の運航に支障をきたす制度とならないよう引き続き対応しなければなりません。その他にも、SOx規制の強化やGHG排出量削減目標の設定などの対応すべき課題があります。順次強化される環境規制が合理的なものとなるよう、国土交通省をはじめとする関係省と協議して積極的にルール作りに関与し、適切に対応してまいります。

 一方、航行安全の確保に目を向けると、各国政府による海賊対処行動等により沈静化していたソマリア沖・アデン湾でのハイジャック等の行為が昨年再び活発化する動きを見せるなど、依然として一般商船が脅威にさらされている状況です。昨年10月には派遣海賊対処行動の自衛隊の活動拠点であるジブチを訪問し、改めて現地の関係の皆様のご尽力に対する感謝の意を強くしました。海運業界も引き続き自衛措置を講じてまいりますが、各国のこのような活動による抑止は不可欠であり、海賊の根絶に向けた活動を継続していただきたいと願っております。

 最後となりますが、当協会は、わが国海運が安定的な海上輸送を通して国民生活や産業活動に引き続き貢献していけるよう一層努めてまいりますので、本年も皆様のご指導、お力添えを賜りますよう、お願い申し上げます。

以上

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