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オピニオン

2018年6月1日

小野理事長

海洋資源開発と海運

日本船主協会 理事長
小野 芳清

海洋基本法に基づく第3次の海洋基本計画が去る5月15日に閣議決定されました。今回の基本計画では、これまでの基本計画と同様、海洋開発に相当の紙幅が割かれています。皆様ご承知のように、わが国の領海と排他的経済水域(EEZ)を合わせた面積はわが国領土の約12倍であり、しかもわが国の管轄権が及ぶこの広大な海域には豊富なエネルギー・鉱物資源が存在することがわかっています。これらが利用可能となれば、資源小国と言われているわが国の実質がかなり変化し、それがわが国の経済や安全保障論議、はたまた外交戦略にも少なからざる影響を及ぼすことが予想されます。
 一方、わが国の大手海運会社は、今や世界の海洋開発に相当程度関与しているのが実態です。もともと海洋を舞台に活躍するノウハウをしっかりと蓄積してきた企業が、海洋開発、とりわけ海洋におけるエネルギー・鉱物資源の開発という比較的新しく将来有望な分野に関わっていくのは、自然の流れであり、また人類全体にとっても望ましいことです。日本船主協会としても、海洋開発の重要性に着目し、平成26年に定款を改正し、「・・・海運業に係る海洋開発事業・・・に関する諸般の調査研究を行い、・・・国民生活の向上に貢献することを目的とする。」と「日本船主協会の目的」を広げました。現時点ではこの分野に関し業界団体として行動する必要のある具体的事例は出てきておりませんが、将来必ずや出てくるものと思っております。
 ここで突然話の次元を変えて恐縮ですが、本年4月から期限5年の新しいトン数標準税制がスタートしました。海運産業界の心からの要望である「国際標準化」にはまだ届かないものの、従来のものより一歩前進した内容となっています。次期の“新々”トン数標準税制は平成(?)35年度からスタートするため、その2年前の平成(?)33年秋には税制要求を行うことになります。ということは、これから3年間でトン数標準税制を「理想形」にするための「理論武装」を行わなければならないことになります。この「理論武装」の中心的内容となるのが、「日本商船隊を運用する“外航海運企業”はわが国にとって重要かつ欠くべからざるものであり、その国際競争力の維持・強化は国家的課題である。」ということになると思っております。ここでひとつ問題となるのが、なぜ「重要かつ欠くべからざるもの」であるのか?の「理由付け」です。
 先に海洋開発はわが国の重要課題であることを述べましたが、様々な「理由付け」の一つとして、「既に海洋利用のノウハウを持っているわが国外航海運企業を維持・強化することは、わが国の海洋開発推進の観点からも重要である。」といったことも考えられます。この点に関しては、今後さらに関係者間で議論を深めたいと思っておりますが、本稿の読者の皆様からも何がしかの御意見や情報などをいただければ幸甚です。どうかよろしくお願い申し上げます。

以上

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