JSA 一般社団法人日本船主協会
文字サイズを変更する
小
中
大

Homeオピニオン >2019年1月

オピニオン

2019年1月1日

武藤会長

2019年新春を迎えて

一般社団法人 日本船主協会
会長 武藤 光一

新年あけましておめでとうございます。

2019年の年頭にあたり一言ご挨拶申し上げます。

昨年は、記録的な豪雨や台風、地震など、日本各地が多くの自然災害に見舞われた年であり、物流の寸断が国民生活や企業活動に大きな影響を及ぼした年でもありました。被災者の方々にはあらためて心よりお見舞い申し上げます。

昨年の世界経済は緩やかな回復がみられ、これに支えられて海運市況においてもドライバルクなどで回復傾向がみられましたが、他方では、米国の保護主義政策に伴う米国・中国間での貿易摩擦の深刻化、目前に迫ってきた環境規制の厳格化など、先行きが不透明な状況にあります。

このような状況下ではありますが、日本の海運が国民生活や産業活動を支える使命を果たすことができるよう、当協会は引き続き様々な重要課題に取り組んでまいります。

中でも、国際社会での主要な関心事となってきた地球環境保全に取り組むことは、海運業界にとって重要な責務の一つです。バラスト水処理に関する規制、船舶燃料油の硫黄分濃度規制に続き、昨年には船舶起源の温室効果ガスの規制に関しても海運界に目標が示されました。

当協会は差し迫った問題への対処とともに、社会全体の未来を守るべく、環境対策全般において自助努力に努めてまいりますが、このような環境対策への取り組みにおいては、広く国民の皆様にご理解をいただくことが重要です。関係の皆様のご協力を賜りますようお願い申し上げます。

次に、海運税制への取り組みです。昨年は平成31年度税制改正に向け、本年3月末に期限を迎える「外航船舶の特別償却制度」の延長・拡充について、国土交通省と緊密に連携し、関係方面へ要望した結果、ほぼ要望通りの内容で認められました。ここに改めまして、国会の諸先生方、国土交通省および関係の皆様のご支援に厚く御礼申し上げます。

厳しい国際競争の中、同じ条件で競争できる経営環境の整備は、極めて重要な取り組みの一つです。本年もわが国海運のさらなる発展に貢献すべく、イコールフッティングの実現を目指して取り組んでまいりますので、引き続き関係の皆様のご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

他方、航行安全の確保に目を向けますと、各国政府による海賊対処行動により、ソマリア沖・アデン湾におけるハイジャック等の事案は沈静化しつつありますが、依然として世界各地において海賊事案の脅威は残っています。

昨年11月には、自衛隊の海賊対処行動の活動拠点であるジブチに当協会より訪問団を派遣し、猛暑と砂塵の過酷な環境の中で任務にあたる現地の皆様のご尽力に対し感謝申し上げました。海運業界での自衛措置は当然のことではありますが、各国部隊におかれましては、協調して海賊の根絶に向けた活動を引き続き実施していただきたいと願っております。

これら海運業界特有ともいえる重要課題の解決に向けては、国民の皆様に海運のことを理解していただくことが不可欠です。当協会は、「海運の重要性に関する認知度向上」を主要課題として掲げており、商船の一般公開をはじめ、海運に親しんでいただくイベントを全国各地で開催しているほか、教育現場で海運を取り上げた授業が実施されるよう、教育関係の皆様の海運への理解促進に向けた活動を行っております。

特に昨年は、このような取り組みの成果として、数多くの小学校から授業の題材としての海運に関する様々な問い合わせや、海事関連施設の見学希望、資料の提供の要請を頂き、当協会としても、見学や取材、授業づくりに協力してまいりました。次世代を担う子供たちが海運の重要性を理解できるよう工夫しながら、海運業界を挙げて広報活動を展開してまいります。

「平成」の30年間を振り返りますと、好況に沸いた時期もありましたが、総じてみれば円高、長期不況などによる厳しい経営環境の中、会員各社はこれらを必死で乗り越えながら企業活動を継続してまいりました。5月からは新しい元号となります。新たな課題にも取り組みつつ、安定的な海上輸送を通してわが国の経済社会全体の発展に寄与することができるよう一層努めてまいります。最後に、この一年の皆様のご多幸とご発展を祈念いたしまして、新年のご挨拶とさせていただきます。

以上

  • オピニオン
  • 海運政策・税制
  • 海賊問題
  • 環境問題
  • 各種レポート
  • IMO情報
  • ASF情報
  • 海事人材の確保