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オピニオン

2019年10月1日

野瀬常任委員

リサイクル

日本船主協会 常任委員
NYKバルク・プロジェクト 代表取締役社長
野瀬 素之

たまに不用品をリサイクルショップに持ち込むことがある。売却後に売場で販売価格を見ると結構いい値がついており、海運業と違って粗利率が高い商売だなと羨ましく思う。最近はフリマアプリ(フリーマーケット アプリ)を利用してのオンライン上での個人間売買も盛んであるが、いずれにせよ物が循環して有効利用されるのは結構なことである。

ところで「リサイクル」という言葉はいつから使われ始めたのだろうか?インターネットで調べてみたところ、アメリカで1970年に造られた言葉で、日本で使われ始めたのは1974年頃とのこと。当初は「リサイタル」や「サイクリング」と混同・誤解されることもあったそうだ。製鉄業や製紙業ではずっと昔から実践されていたことだが、意外と歴史の浅い言葉である。

因みに1974年というのは、第一次オイルショックの翌年である。一時的に物が無くなり「トイレットペーパー騒動」が起きたり、物価が高騰して「狂乱物価」と呼ばれた時代である。また、その前年には、ローマクラブの「成長の限界」という研究報告が、このまま大量生産・大量消費・大量廃棄を続けると、世界は100年以内に破局を迎える可能性があると警鐘を鳴らした。そういう時代背景の中でリサイクルという概念が誕生・普及していった訳である。

「成長の限界」の破局シナリオを未然に防ぐためには、ライフスタイル・経済活動の見直しと共にイノベーションが必須である。最近CO2や廃プラスチックを回収して衣料原料などを作るリサイクル技術の研究が進んでいるとの新聞記事を目にしたが、是非採算性のハードルをクリアして実用化されて欲しい。昨今、環境負荷低減に向けての研究・取組みが様々な面で行われており、それらがどんどん実を結んで破局が回避されると信じている。

筆者が担当しているハンディーバルカー・多目的船・重量物船でも、スクラップ・スラグ・中古コンテナクレーン・中古車・椰子殻(PKS)・ウッドペレット・風力発電機といったリサイクルやリニューアブルエネルギーの貨物をたくさん輸送している。漢字で表すと屑・滓・古・残渣・端(材)となりイメージが良くないが、重要で大切な貨物である。環境負荷低減の取組みの一翼を担っていると思うと誇らしい気分になる。

ただ、リサイクルやリニューアブルエネルギーはそのオペレーション(含む海上輸送)に相応のエネルギーを必要とするので、トータルで見るとより環境に負荷を与えてしまいリサイクル・リニューをしない方が良いというケースもありうる。海運企業にとって、海上輸送における環境負荷低減のために関係業界と協力しつつ不断の努力を続けていくことは、社会の公器としての責務であるが、そういう残念なケースを発生させないためにも、全力を挙げて取り組んでいきたい。

以上

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