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オピニオン

2020年1月1日

内藤会長

2020年新春を迎えて

一般社団法人 日本船主協会
会長 内藤 忠顕

新年あけましておめでとうございます。

2020年の年頭にあたり一言ご挨拶申し上げます。

昨年は、度重なる台風の襲来による大雨が各地で甚大な被害をもたらしました。被災された方々にはあらためて心よりお見舞い申し上げますとともに、被災した地域の復旧をお祈り申し上げます。

昨年の世界経済を振り返ると、米中貿易摩擦の激化のみならず、地政学的なリスク、新興・途上国における景気減速などにより、経済成長率はリーマンショック以降最低となりました。一方海運市況では、コンテナ輸送、ドライバルク、エネルギー輸送に堅調な推移が見られたものの、環境規制や国際情勢が今後に及ぼす影響は依然不透明な状況にあります。

こうしたなか、日本船主協会はわが国海運の更なる成長・発展のため、知恵を絞り創意と工夫をもって山積している様々な重要課題に取り組んでまいります。

とりわけ重要な課題として、SOx規制への対応、地球温暖化対策、バラスト水管理条約の円滑な実施など地球・海洋環境保全への取り組みがあげられます。SOx規制は本年1月1日より施行されましたが、適合油の品質や供給、内燃機関への影響など今後様々な問題が生じることも考えられますので引き続き関係の皆様と情報を共有して、円滑な導入に取り組んでまいります。また地球温暖化対策としてのGHG排出削減について、IMOで野心的な削減目標が設定されましたが、大事なことは海運業界として具体的かつ現実的な対策を講じて対応していくことと考えます。

次に航行安全ですが、昨年オマーン湾で当協会会員会社のタンカーが何者かによる攻撃を受け、わが国でも緊張が高まりました。当協会では関係省庁と緊密な連携を取りながら対処しておりますが、もとより海運は平和でなければ成り立たない産業です。つまり海運は航行の自由および安全が担保されて初めて国民生活やわが国の経済の発展に寄与していくことができることをご理解いただきたくお願い申し上げます。

一方で、ソマリア沖・アデン湾における海賊事案については、今日ではかなり状況が改善されてきております。特に日本においては海賊対処法の下、自衛隊や海上保安庁の皆様に海賊問題へご対応頂いており、昨年9月ジブチに当協会および関係団体からなる訪問団を派遣し、皆様のご尽力に感謝申し上げました。われわれとしては引き続き各国政府の緊密な連携および活動を継続していただきたいと願っております。

厳しい国際競争にさらされている外航海運企業にとって、他国の企業と同条件で競争できる経営環境の整備は、極めて重要な取り組みの一つです。昨年は令和2年度税制改正に向け、本年3月末に期限を迎える「外航船舶の圧縮記帳(買換特例)」および「国際船舶に係る登録免許税の特例措置」の延長について、関係方面へ要望した結果、ほぼ要望通りの内容で認められました。ここに改めまして、国会の諸先生方、国土交通省および関係の皆様のご支援に厚く御礼申し上げます。

また、安全運航を支える優秀な船員の確保・育成にも引き続き取り組んでまいります。外航海運を例に取り上げますと、船の大型化や安全基準の厳格化により、これまで以上に船員の質の向上が担保される必要がありますが、それを支える核となるのはやはり日本人船員です。日本人船員の高い安全意識と技術が根底にあり、それが外国人船員の意識向上にも波及し、全体のレベルを確保しているのが日本の外航海運の現状であります。また内航海運においては、船員不足は非常に深刻であります。昨年7月、当協会では人材の確保とともに将来の船員教育の在り方などを真摯に検討すべく、海事人材部を新設しました。引き続き、教育機関等と連携した広報活動など地道な取り組みが重要です。

これまであげた様々な取り組みを含め、国民の皆様に海運のことを知っていただくため、商船の一般公開をはじめ、海や船に親しんでいただく活動を行っております。昨年5月には新学習指導要領に基づく小学校の新しい教科書が公表され、5年生の社会科で海運に触れる記述が増加しましたので、これを基に海運の役割を取り上げた授業が広く行われることを期待しております。未来を担う子供たちを含めた社会全体の海運に関する理解がさらに深まるよう、広報活動により一層力を入れてまいります。

新しい「令和」の時代が始まり、東京オリンピック・パラリンピックの開催に伴う経済効果や消費拡大が期待されますが、当協会も諸問題解決に全力で取り組み、わが国海運業界のみならず、海事クラスターおよび日本経済全体の発展に寄与できるよう努めてまいりますので、本年も皆様のご指導、お力添えを賜りますようお願い申し上げます。

以上

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