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オピニオン

2020年2月1日

田渕常任委員

令和時代の内航海運ビジネスについて
私が思うこと

日本船主協会 常任委員
田渕海運 代表取締役社長
田渕 訓生

昨年5月より平成から令和に入り、内航海運にとっても大きな転換期が訪れております。昭和42年制定の海運二法による船腹調整事業の廃止により平成10年から始まった暫定措置事業ですが、今の流れ(令和元年12月現在)では早ければ令和2年中には返済も終了すると考えられています。現在、その終わり方について、議論がなされていますが、『できる限り納付金を残さず終了させ、次の事業が決まってから必要資金を考えていく』方法や『年度終了までは実施し、納付金の残金は次の事業の資金とする』方法などと、両案の中間案として『カウントダウン方式』などなど、考え方は色々でてきており、この投稿が掲載される頃には『終わり方』が決まっているのではないでしょうか。しかしながら暫定事業の終わり方が決まっても、その後の事業(暫定措置事業に代わる何か?)について現在は何も決まっていません。そうなるとどうなるのか?『令和時代の内航海運ビジネスについて私が思うこと』という大胆な『表題』について、私のような一個人が申し上げることではなく、長年の経験と知識を持っておられる多くの業界の方々が議論を重ねて行かなければならないと思いますが、昨今の内航海運について私が常々思うことを書かせていただきます。

あくまで私の予想ではありますが、暫定措置事業の終了後に内航業界(5組合)は一旦解散になるかもしれないが、残務整理の為、取り纏め役の内航総連合会とその事務局だけは残らなければならない。そして、その後の新ルールでは業界の誰もが平等に自由に建造出来ることになれば、それはそれで素晴らしいことだと思います。しかしながら建造ルールの垣根が無くなることによる秩序の乱れ(例えばタンカー部門なら一般タンカーと特タンの垣根、積荷保証の有無など)により、小さな混乱が考えられる。いずれにしても国土交通省との窓口であり、取り纏め役の(仮称)新内航総連合会ではロビー活動、環境安全対策、船員対策、その他、業界の代表としての事業はこれからも重要であることに変わりない。だが、それらを維持する為の資金は必要であり、どのように捻出するか考えて行かねばならないと思います。

更に、最近、私が強く思うことは新内航総連合会が出来ても考え方の大きく違う『船種』の種別の管理方法をしっかりとやらなければならないと思います。特に国土交通省や新内航総連合会関係の方々には船種の違いの把握、例えば船の『大きい、小さい』、積荷の個体では『RORO船、コンテナ船、自動車専用船、セメント船、鉄鋼など一般貨物船、ばら積み船』、液体では『石油タンカー船、ケミカル船、無機化学品船、バンカリング船その他』、ガスでは『LPG船、LNG船など』、さらに積・揚港での『乗組員での荷役の有、無』、付帯作業では航海中での『タンク及び貨物層内のクリーニングの有、無』『ガスフリー作業、減圧作業の有、無』などの乗組員が行っている全ての業務形態の違いを認識していただき、本当の働き方改革を考える必要があると思う。それぞれの船種における作業場での悩みごとや将来における物流の重要性(日本経済として絶対無くなっては困るもの)を認識していただき海運の行政に活かしてほしいと思っております。この船種の中で行政関係の『ひと手間』がなければ・・・。今後、誰もヤラナイ『絶滅危惧 船種』は必ず発生し、それが日本経済として無くなっては困るもの(トラック、コンテナ船、RORO船などの代用物流がきかないもの)だったとしたら、第二の物流ショックであり大変なことになるのではないかと思っています。

私が海運業界に携わった30年間で特に小型船舶の港のインフラ設備は変化なく、あまり期待はできない。それなら船舶自身の改革(ソフト:船員、ハード:船舶)が無ければ、乗組員は『狭く3K職場の小型船』に愛想を尽かせ『広くて環境のいい大型船』に大移動することになる?新内航総連合会には、そうならない為に有効な施策を考えて頂くことを期待しています。

以上

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