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オピニオン

2021年5月1日

池田副会長

「続 今、思うこと – – 新型コロナ
ウイルス肺炎の終息を願って」

日本船主協会 副会長
商船三井 代表取締役会長
池田 潤一郎

今からちょうど一年程前、新型コロナウイルスが猛威を振るいはじめ、先行きが全く見通せなかった最中、同じタイトルでこの寄稿文を書かせて頂いた。当時を思い起こすと、海事産業を取り巻く世界が、現代を生きる多くの人々が経験したことのない暗闇に飲み込まれ、リーマンショック時を下回る市況環境に陥るのではと身構えていた。

蓋を開けてみれば、巣ごもり生活による需要創出などもあり、予想よりも早く海上物流が回復した。それだけではなく、特にコンテナについては昨年後半からは前年を上回る荷動きになり、コンテナ不足や港湾荷役、内陸輸送への負荷などの問題を起こすほどになっている。顧客へのサービスにも影響を与えているため、早期解決に向けて努めていきたい。

この一年コロナウイルスが世界にもたらした変化が如何に大きなものか、私が今更述べるまでもないが、テクノロジーの発展などがもたらした働き方の変化もさることながら、世の中のSDGsへの関心の高まりを受けた経営に対する社会的要請の変化の方が、予想を超えたものになったと感じている。

海運業にとってSDGsへの貢献といえば、脱炭素化への取り組みが注目されるが、世界の人々の生活を支えている様々な生活必需品、物資、エネルギーなどの輸送を絶やさず、グローバル経済、社会の持続的成長を支える役割が、本来海運が担っているSDGsへの貢献のための役割だ。グローバル経済と社会を人間の体に置き換えると、海運業は体内に酸素と栄養を含んだ血液を循環させることに例えられる。

先が見通せないコロナウイルス感染拡大は、その役割を阻害する外的要因に今日現在もなっている。船の乗組員交代が一部の国で制限されて船が本来のルートを離れざるを得ないケース、港湾労働者が労働に制限を受けるケースなどの例が挙げられる。一日も早いコロナウイルスの終息による正常化を願う。

海運とSDGsに関連した話題として、昨年から世間の耳目を集める大きな事故があった。商船三井が深く関与した事故もあった。このような大きな事故は、事故を起こしたコミュニティに多大な迷惑をかけ、また、輸送を遮ることで、グローバル経済、社会の持続的成長への阻害要因にもつながる。改めて、事故を起こさないことに対する我々の責任は重いと痛感する。

外的要因であるコロナウイルスを終息させることはできないが、原点に立ち返ってより高いレベルの安全運航を目指すことはできる。企業がSDGsへ貢献するには、「企業の知」と「社会の知」を結合し、新たな価値を作り出すことが不可欠というが、今後も外部組織や取引関係者と連携、協力し、安全運航に磨きをかけていく。それがグローバル経済と社会をつなぐ血流を助ける海運業としてのSDGsへの貢献の一つの柱であり続けることに、今後も変わりはないはずだ。

以上
※本稿は筆者の個人的な見解を掲載するものです。

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