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オピニオン

2022年1月1日

池田会長

2022年新春を迎えて

日本船主協会 会長
池田 潤一郎

新年あけましておめでとうございます。

2022年の年頭にあたり一言ご挨拶申し上げます。

新型コロナウイルスの発生から2年が経ち、わが国・世界の海運や経済、社会への影響が続いております。先進国を中心にワクチン接種が進み、改善の兆しはあるものの、依然として一進一退の状況です。今年こそは、世界を取り巻くコロナ禍の状況が一層改善し、世界中の人々にとってより良い一年になることを祈ります。

世界の物流を支える海運は、コロナ禍においても日夜活動を停めることなく、その使命を果たし続けています。各国の水際対策の強化によって乗船期間の長期化や制限を受けた乗下船などご苦労が絶えない船員の皆様の努力に対し、この場を借りて御礼申し上げます。

コロナ禍により、サプライチェーンで重要な役割を担う海運の存在が改めて浮き彫りになったことは嬉しいことですが、その一方で、港湾や陸上輸送の停滞など様々な要素が相俟って発生しているコンテナ輸送の需給逼迫も、広く認知されました。責任の一端を担う海運業界として、状況改善に向けて出来る限りの努力を続けたいと思います。

さて、当協会は、本年においても、山積する海運業界の課題に鋭意取り組み、日本の海運のさらなる発展に貢献して参ります。

まず、世界の海を舞台に活動する海運業界にとって、GHG(温室効果ガス)をはじめとする環境問題への対応が、最重要課題の一つです。昨年のCOP26でも脱炭素化に向けた活発な国際的議論が交わされましたが、IMO(国際海事機関)の第77回海洋環境保護委員会においても、GHG削減戦略の見直しに係る議論が始まりました。

当協会では、これらに先立ち、日本の海運業界として「2050年GHGネットゼロ」へ挑戦することを表明しました。環境問題への積極的対応は、海運業界としてのSDGsへの貢献のみならず、日本の海運業界、ひいては国内海事クラスター全体にとって、新たな国際競争力の源につながると強く信じています。引き続き世界を牽引していく姿勢で挑んでいきます。

次に、同じく国際競争力強化の観点で、海運税制を挙げます。厳しい国際競争に晒されている外航海運企業にとって、他国の競争相手と同条件で競争するための環境整備は非常に重要な課題です。

昨年は、令和4年度税制改正において当協会が重点要望事項としていた「国際船舶に係る登録免許税の特例措置の延長」が認められました。改めて、国会議員の先生方、国土交通省および関係の皆様のご支援に厚く御礼申し上げます。

2022年度末には、トン数標準税制、船舶の特別償却制度、船舶の買換特例(圧縮記帳)制度が期限を迎えます。いずれの税制も、わが国外航海運の国際競争力の維持・強化に不可欠な制度です。国土交通省海事局とも連携して、令和5年度税制改正に取り組んで参ります。

また、海賊対処をはじめとした船舶の安全運航課題への取り組みも、最重要課題の一つです。

ソマリア沖・アデン湾海域おける海賊発生件数は、本邦自衛隊と海上保安庁職員を含む各国政府による海賊対処行動などのお蔭で、近年大幅に減少しておりますが、まだ完全になくなったわけではありません。

中東海域においては船舶の拿捕や船舶への攻撃リスクが消えることはなく、また、日本海付近では北朝鮮から飛来するミサイルが船舶に着弾する潜在的リスクにも晒されています。

これらリスクは、日本商船隊の船舶とその乗組員を危険に晒すだけではなく、わが国の経済安全保障への大きな脅威になります。民間企業の自助努力だけでは解決できない問題ですので、引き続き政府による力強いご支援をお願い致します。

上述した諸課題への取り組みを進める上では、国民の皆様の海運に対するご理解、ご協力が必要不可欠になります。国民の皆様に海運の重要性を知って頂くための海事広報には、従来に増して尽力して参る所存です。

最後に、海運業にとってSDGsへの貢献といえば、昨今は低・脱炭素化への取り組みが注目されておりますが、本来海運が担っているSDGsへの最大の貢献は、安全運航を通じ、人々の生活を支える様々な生活必需品、物資、エネルギーなどの輸送を絶やさず、グローバル経済、社会の持続的成長を支えることです。

原点に立ち返り、より高いレベルの安全運航を業界一丸となって目指す、そんな一年にしたいとも考えています。関係の皆様のご指導、ご支援をお願いし、私の挨拶の結びとさせて頂きます。

以上

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