JSA 一般社団法人日本船主協会
文字サイズを変更する
小
中
大

Homeオピニオン >2022年2月

オピニオン

2022年2月1日

田渕常任委員

『令和4年度の内航海運を思う』

日本船主協会 常任委員
田渕海運 代表取締役社長
田渕 訓生

日本船主協会のオピニオンの寄稿は、今回で3年連続の3回目になります。

第1回目は2019年度『令和時代の内航海運ビジネスについて私が思うこと』として令和2年度中の暫定措置事業の終了を鑑み、その後も内航海運業界のまとめ役(新総連合会)が必要であることや内航海運に船種の違いがあり、それぞれ特性を考えてしっかり管理して頂きたいなどと論じました。その時に特に感じたことですが、内航海運の中には絶滅危惧種になる可能性がある船種も存在すると考えました。

第2回目は2020年度『海運業界と内航小型船舶における諸問題について』と題して内航のカボタージュ制度から始まり、内航海運の輸送比率から最後はやはり小型船の絶滅危惧種を創らないための今後の必要な施策を列記し、さらに小型船対策を探求致しました。

今回の第3回目2021年度版といたしましては、本年5月より本格化される船員法改正による内航海運の働き方改革を鑑み、さらに船舶管理の難易度が上がってくることは間違いなく(小さな船では限られた居住区で船員数を増員できない問題がある故、船舶の休暇が必要)、結果的には荷主を含めた官民一体の対策が必要になってきます。

労働時間の制約により船舶の不稼働日は増加(例えば、月間26日が20日になればH/B計算上1/26日から1/20日となり1日当たりの固定費コストは上昇)します。

タンカー船では荷役作業を船員が自ら行い、その他の特殊な作業(ガスフリー作業、クリーニング作業、封印作業など)や、一般貨物船でのダンネージの回収整理作業の時間はすべて船員の労働時間に含まれます。これらを削減するには少しでも陸上支援体制で対応していただけないか?考えていく必要があります。

昨今、地球温暖化によるCO2削減方針(カーボンニュートラル)が徐々に進んでいく過程でもあります。外航海運では大型船を中心にLNG燃料船、アンモニア燃料船などが中心に開発が進んでいるようですが、内航海運では小零細事業主の問題、船型が小型であるが故にこれらの膨大なコスト増に対応しにくく、技術革新が進みにくい状況であります。また重油とバイオ燃料を混合して使用なども考えられますが、コストや供給量がどうなるのか?というところも見ていく必要性があります。また使用燃料を何にするか?考え方はいろいろとありますが、逆に内航船は陸上に近いところを航海するため、燃料補給(SHIP to SHIP以外に陸上のガソリンスタンドみたいな供給基地、コンテナカセット燃料方式)や電源補給、充電補給なども考えられております。これらのポートを使ったさまざまな施策は内航海運の独特のものとして考えられ、CNP(カーボンニュートラルポート)の進展により大きな優位性があり、陸上支援体制として港湾業者の皆様、港湾局を含めた国土交通省関係者の方々のご尽力に頼りたいというところです。

今のところ、小型カーボンニュートラルエンジンの開発を待つイメージですが、もう一つの考え方(技術革新)として内燃エンジンは重油利用のままで、可能性の問題ですが燃焼時に排出するCO2を大気放出させないための小型CO2回収設備の開発も必要かと思います。その場合、回収したCO2をさらに陸揚げし、リサイクルする技術も必要ですが、これが出来れば相当カーボンニュートラルに貢献できる新しい施策になるのではと思います。さらに海事局の方々と船舶構造の規制緩和とミックスして積み荷の減少を最小限にとどめることができれば面白いのではないか、と勝手に考えております。

最後に船員法改正、カーボンニュートラルと難題が迫ってきますが関係者の方々には舵取りしっかりと行っていただき、今年から徐々にではありますが、船員の労働条件改善が一気に進み、船員の絶対数の増加、さらに船員の地位向上につながり、まさに『四面を海に囲まれた海洋国家日本の理想的な物流体制になっていくこと』を期待したいと思います。うまく進めることで真のモーダルシフト、海上物流が躍進する可能性は大いにあるといえるでしょう。その最終目標の前に迫った多くの課題をクリアすること、今後は船舶管理の難易度が上がってくることは間違いなく、限りなく船舶の自動化システムへの推進といろんな意味で『荷主を含めた官民一体の協力体制が必要不可欠だ』と思う今日この頃です。

以上
※本稿は筆者の個人的な見解を掲載するものです。

  • オピニオン
  • 海運政策・税制
  • 海賊問題
  • 環境問題
  • 各種レポート
  • IMO情報
  • ASF情報
  • 海事人材の確保