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オピニオン

2022年5月1日

長澤副会長

ウクライナ侵攻と日本海運

日本船主協会 副会長
日本郵船 代表取締役社長
長澤 仁志

まず冒頭に、新型コロナウイルス感染症がなかなか収束しないなか、最前線で体を張りながら、物流を守るために尽力されている乗組員を始め関係の皆様に心から敬意を表します。またコロナ影響により亡くなられた方々に対して哀悼の意を表したいと思います。

医学が飛躍的に進歩した21世紀の時代において、このようなパンデミックが起こる事に驚いている暇もなく、本年2月末にはロシアによるウクライナ侵攻が行われました。当初はウクライナ東部に限定された話かと思われていましたが、ほぼウクライナ全域で交戦状態となり、今回の事象は戦争と表しても過言ではない極めて悲惨な状況です。連日報道にて、故郷を追われ近隣諸国へ避難を余儀なくされている方々や、幼い子供含めて犠牲になった方々を見るにつけ、心が痛んでなりません。一刻も早い事態の収束を願うばかりです。一方、日本船主協会の会員が保有・運航する船舶においても突然の戦禍に巻き込まれてしまったケースがありました。また今回のロシアの行動について西側諸国の反応は非常に厳しく、オイルメジャーの一部などを筆頭にロシア事業からの撤退を表明している企業もあります。

ロシアへのエネルギー依存度が大きいドイツを筆頭とする欧州の国々では、エネルギー政策の大転換をせざるを得ない状況になっています。原油、天然ガスに加え、石炭・小麦などの価格も急騰しており、今回のロシアによるウクライナ侵攻は、戦後秩序を根底から揺るがすだけでなく、世界経済の構造や様々なサプライチェーンの変化をもたらすことは必至です。

このような状況のなか、経済安全保障の意味合いからも改めて日本商船隊の重要性が再認識されるのではないでしょうか。日本の貿易量における海上輸送の割合は全体の99.6%を占めており、特に「衣食住」のもととなる原材料は、ほぼ100%海外から船舶で輸入しています。わが国のライフラインを守っていく上で船舶は大変重要なピースであり、各国の政治的な思惑に左右されないよう、日本商船隊の体制を更に強固にし、十分な日本人船員を養成し続けていくことが、極めて重要だと考えます。各種税制の整備、船員育成プログラムの構築の重要性について、国民の皆様や関係省庁に訴え、少しでも日本商船隊を強くできるよう、尽力していきたいと思います。

以上
※本稿は筆者の個人的な見解を掲載するものです。

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