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オピニオン

2022年8月1日

ひろ瀬副会長

ESGプラスαの時代に

日本船主協会 副会長
ENEOSオーシャン 代表取締役社長
瀬 隆史

ロシアのウクライナ侵略に端を発した食糧危機・エネルギー危機などから、世界的なインフレと景気減速が顕著になっています。新型コロナウイルスに続き、予想外の環境変化とはまだまだ起こりえるのだと、企業もわれわれも、あらためて認識したのではないでしょうか。

そのような混沌とした時代に企業が果たすべき課題を掲げるESGですが、昨今ではEnvironment、Social、Governanceにプラスαとして、もう1つ要素を加える流れがあります。様々な観点があり、企業の独自課題としてQuality(質)やTechnology(技術)などを上げる声があります。Ethics(倫理感)やIntegrity(誠実さ)もこのところよく耳にするようになったキーワードではないでしょうか。元々倫理に基づく経済活動や投資は1920年代頃から提唱されています。ESG経営でも礎石となるものではありますが、グリーンウォッシュ(企業が環境に配慮しているような見せかけ)やブルーウォッシュ(同じくうわべだけの人道配慮)が無くならない現状において、再認識が求められているように思います。まさに企業が倫理観を持って、真摯に社会的課題の解決に向き合うことが求められている表れでしょう。

このようにESGの重要性が認識される一方、現場の取り組みはなかなか大変な積み重ねが日々繰り返されています。ENEOSオーシャンの場合、「E」においては、GHG削減に対応するため当初特命チームを組みましたが、よりスピード感を持って対応にあたるため、最終的には一つのグループとして正式に組織化しました。また、次世代エネルギー・燃料については、様々なアンテナを張り巡らせていますが、皆さんと同様、暫くは模索が続きそうです。「S」の分野では、サプライチェーンへのアンケート調査を行いました。人権デューデリジェンスも実施しています。どちらも時間と労力を必要としますが、企業の社会的責任の観点から避けては通れません。海外での事業展開も、人権問題などが懸念されないか、慎重に調査します。「G」においては、社内のリスク・マトリックスを作成し、皆、膨大な資料と格闘しました。反社対応としては調査システムを導入し、万が一のときのため、取引先の確認を行っています。

予想外の環境変化はまだまだ起こるのでしょうが、ESG課題にしっかり対峙する会社・機関は、経済、国際政治、自然脅威などのリスクに対応できる応用力を備えた組織でしょう。プラスαに固定の正解は無く、業種や環境によってしなやかな対応が求められるのだと考えます。

ENEOSオーシャンにとってのプラスαはSafetyです。言い尽くされ、目新しいテーマではありませんが、海運会社にとっての社会貢献とは安全にものを運ぶことにほかなりません。あえて基本に立ち返るテーマをプラスαとして掲げ、これからも安全輸送を当たり前に提供すべく、一つ一つを丁寧に取り組んでいきたいと思います。

以上
※本稿は筆者の個人的な見解を掲載するものです。

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