JSA 一般社団法人日本船主協会
文字サイズを変更する
小
中
大

Homeオピニオン >2023年5月

オピニオン

2023年5月1日

長澤副会長

日本船主協会

日本船主協会 副会長
日本郵船 取締役会長
長澤 仁志

漸くコロナ禍が収束しそうな気配があり、物流、人流にも通常の流れが戻ってきました。この間、交代等苦労が多々あった乗組員またその家族の皆さん、更には陸上から乗組員を支えた皆さんの尽力に深い敬意と感謝を申し上げたいと思います。

一方、昨年2月に勃発したロシアによるウクライナ侵攻は、既に戦争と言っても過言ではない状況が継続しており、その終焉がいつになるのか全く予測も出来ない程泥沼に陥っています。この戦争は世界中でイデオロギーの違いをより鮮明にし、民主主義を標榜するG7を中心とする所謂西側諸国、権威主義的な国家である中国、ロシア、イラン等の国々、更には数として大きな勢力でありインドがその中心に座ろうとしているグローバルサウス諸国が台頭し、世界は益々混迷の状況となってしまいました。本当に不幸な戦争であった第二次世界大戦後、イデオロギーの違いはあれども国際連合もそれなりの機能は果たし、何とか世界平和を保ってきました。その間、世界経済の復興、成長もありわれわれの主業である海運業も紆余曲折を経ながらも成長してきました。現在の状況はかなり厳しい状況と個人的には思いますが、状況の推移を見守るしかありません。大幅に増額される防衛費が有効であったという時が決して来ない事を願っています。さてそんな中、世界、とりわけ日本への物流に責任あるわれわれとしては、やはり最悪の事を考えておく必要があると思います。具体的には仮に台湾有事があった際、シーレーンを如何に確保し日本にしっかり人々の生活の為の物資を届けるかの検討を怠ってはいけないと思います。これは個社の問題ではなく、日本船主協会全体の問題と思いますので、協会内で是非議論させて頂き、また、必要に応じ政府関係機関と問題意識の共有をしていきたいと思っています。

次にもう一つの問題意識として日本人船員の問題があります。小職は日本郵船の社長を約4年勤めて参りましたが、その間、残念ながら昔と比較し若手の日本人船員の離職率が増えていることを懸念していました。協会では、池田会長のリーダーシップで海運の重要性、魅力をアピールする広報活動に力を入れています。是非とも国民の人達にしっかり認知され若い人たちが船員を志してくれる事を期待したいと思います。一方で志ある人たちの教育体制も再整備する必要があるのではないでしょうか?商船系高専、商船系大学といった文科省系の教育機関と国土交通省管轄の海技教育機構の在り方をしっかり再検証する必要があると思います。特に内航船員の不足は喫緊の課題であり協会としても勉強したうえで提言、関与が出来ればと思っています。

最後になりましたが協会会員関連の船舶が安全に航海を続ける事を祈念しまして結びとさせて頂きます。

以上
※本稿は筆者の個人的な見解を掲載するものです。

  • オピニオン
  • 海運政策・税制
  • 海賊問題
  • 環境問題
  • 各種レポート
  • IMO情報
  • ASF情報
  • 海事人材の確保