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オピニオン

2023年6月1日

森重理事長

東アフリカの日の丸

日本船主協会 理事長
森重 俊也

この2月、初めてアフリカを訪れた。東アフリカのジブチ共和国。ソマリア沖・アデン湾の海賊対処行動にあたる自衛隊、海上保安庁の隊員の皆様へ感謝の意を込め、海運業界の訪問団は、コロナ禍の中断を経て、約3年半ぶりに現地に赴いた。

それにしてもアフリカは遠い。直行便がなくドバイ乗り換えも5時間かかる。航空機は途中、アデン湾の護衛ルート上に入る。初めて見るアデン湾はとても青い。目に入ってきたアフリカの大地は、茶褐色の荒れ地が延々と続く。

ジブチは人口100万人、アデン湾、紅海に面した四国くらいの国。隣国エチオピアには海がなく、ジブチ港はそのゲートウエイとなっている。空港のある半島中心地区には、各国艦艇が停泊し、仏軍、米軍などの基地、官公庁などがある。農業に適する土地はほとんどなく、街中のヤギの群れ、そのミルクと肉は貴重なたんぱく源とのこと。国家財政は、港湾収入と、基地収入が支えである。

こうしたなか、訪問した海上自衛隊の護衛艦「すずつき」、そしてP3C哨戒機の航空部隊と陸上自衛隊で構成される陸上拠点には、士気高く任務に励まれる自衛隊、海上保安庁の隊員の方々の姿、それを支える大使はじめ大使館の方々の姿があった。

猛暑(夏季50~60度)、砂塵、マラリアの危険の中での活動であり、頭の下がる思いである。30度という現地では過ごしやすい時期であったが、気候、風土を肌で感じると、2009年以来14年にわたる関係者のご苦労が思い起こされる。家族と遠く離れ、日本のライフライン、サプライチェーンの確保に、日本の、それも多くの若い方々が、目を光らせてくれていることに、深く感謝したい。今も各国艦艇がこの海域で、海賊、テロなどの脅威に対処している状況をみると、海賊はいなくなったのではなく、抑えられているということを実感した。

帰国後、思いがけず、TVニュースでジブチの映像を見る。内戦スーダンからの邦人救出。ポートスーダンから自衛隊機でジブチに避難された方々が滞在する、拠点の体育館に、大使、拠点司令、隊員の方々の姿があった。避難の目途がたたない頃、自衛隊機のジブチ到着を知った在留邦人が、「われわれを救いに、自衛隊機がこのアフリカ大陸に着陸した事実だけでも本当にうれしく思う。スーダンに来てくれることを願うのみです」と語っておられたのが印象的である。

この海域は、年間2万隻、うち日本関係船舶1800隻が航行する、アジアと欧州を結ぶ海上物流の大幹線、スエズ運河を通過する交通の要衝。そこに、日本商船隊、日本人の安全を護り、日本経済と暮らしを支える活動拠点があり、日本の隊員の方々がいるという意味を、改めて認識した次第である。

以上
※本稿は筆者の個人的な見解を掲載するものです。

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