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オピニオン

2024年5月1日

長澤副会長

日本船主協会

日本船主協会 副会長
日本郵船 取締役会長
長澤 仁志

ここ数年は終業式の時に桜が満開となっていましたが、今年は入学式で新入生を桜が迎えてくれる年度のスタートとなりました。一方、世界情勢はそのように穏やかな状況になく、2022年2月に勃発したロシアのウクライナ侵攻は未だ収束の気配はありません。更には昨年10月にはパレスチナのハマスがイスラエルを強襲し、その後イスラエルが大々的に反撃し、パレスチナのガザ地区で多くの民間人を含む犠牲者が出ており、大変痛ましく思います。それに関連してイエメンのフーシー派がハマス支援という名目で、イスラエル関連及び支援国の商船に攻撃を加える状況となっており、被弾した商船では船員の死者も出てしまいました。日本郵船が運航していた自動車専用船も乗っ取られ(世界中で映像が流れました)、事件から既に4か月経過した今もなお残念ながら船員は未だ解放されていません。その影響で紅海は安全とは程遠い状況で、多くの船が紅海の航行を回避しています。当然ながら日本商船隊に対する影響も大きく貨物輸送にも支障が出ています。いま原稿を書いている最中もイスラエルがシリアのイラン大使館を攻撃して死者が出たとの報道がありました。この拙文が皆さんのお目に届く時に状況が悪化していない事を望むしかありません。

そのような中、日本船主協会としては会員各社の船の安全運航と船員の安全の確保を第一に、しっかりとした情報提供や必要に応じ国土交通省、外務省といった官庁との連絡をしっかり行う事が肝要と考えています。この地政学的なリスクはどこで勃発するか分かりません。日本船主協会としてもアンテナを高くし会員各社をサポートする所存です。また海運業界の大きな課題としては脱炭素があげられます。EU-ETSが本年1月から開始され、またIMOではいよいよ大きな枠組みが決まる状況となってきました。国際ルールのフェアでかつ尽力している会社が不利益をこうむらない仕組みを構築するべく意見をしっかり発信してかなければなりません。更には海事クラスターの知名度や貢献の発信や船員問題等、諸課題に日本船主協会として取り組んでいきますので引き続き会員各社の御支援を宜しくお願いいたします。

最後になりましたが会員各社関連船舶が安全に航海を続ける事を祈念しまして、結びとさせて頂きます。

以上
※本稿は筆者の個人的な見解を掲載するものです。

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