2025年12月1日
「ギャップ」
日本船主協会 常任委員NYKバルク・プロジェクト 代表取締役社長
栁澤 晋一
この夏の海外旅行を通じて、「ギャップ」という言葉について改めて考える機会がありました。私たちは日常のさまざまな場面で、年齢、性別、文化的背景、価値観、スキルや知識など、多様なギャップに直面しています。その要因は一つではなく、時間の流れや社会情勢の変化、育った環境、教育、経験など、複数の要素が複雑に絡み合っています。
こうしたギャップは、時にコミュニケーションの障壁となることがあります。たとえば、デジタル技術に精通した若い世代と、テクノロジーに苦手意識を持つ年長世代が同じ職場で働く場合、情報伝達のスピードやツールの使い方、仕事の進め方にズレが生じやすくなります。若い世代はチャットツールやクラウドサービスを活用して効率的に業務を進める一方で、年長世代は対面でのやり取りや紙ベースの資料を重視する傾向があり、こうした違いが誤解や摩擦を生むこともあります。
しかし、ギャップは必ずしもネガティブなものではありません。むしろ、異なる視点があるからこそ、新たなアイデアや問題解決の糸口が生まれる可能性が広がります。多様な価値観が交差することで、従来の枠にとらわれない柔軟な発想が生まれ、組織や社会に新しい風を吹き込むことができるのです。
では、こうしたギャップを前向きに活かすためには、何が必要なのでしょうか。まず大切なのは、“理解”だと考えます。自分と相手の背景や価値観を知り、共感を育むことで、不要な衝突を避けることができます。相手の立場に立って考える姿勢が、円滑な人間関係の構築につながります。また、対話の機会を積極的に設けることも効果的です。率直な意見交換を通じて、誤解や先入観を解消し、協力関係を築きやすくなります。
さらに、ギャップを埋める努力と同時に、その“差”そのものを未来への可能性として捉える視点も欠かせません。多様な意見が交わることで、革新的な発想や広い視野が生まれます。たとえば、新旧の価値観が融合することで、より柔軟で創造的なアイデアが生まれるかもしれません。世代間の違いだけでなく、職種や専門分野の違いもまた、互いに補完し合う関係を築くための重要な要素となります。
ギャップは単なる障害ではなく、人と人、あるいは社会と社会をつなぐきっかけにもなり得ます。そのためには、相手を理解しようとする姿勢と、自分の考えを押しつけるのではなく共有しようとする姿勢が重要です。多様性がますます高まる現代において、ギャップをどう受け止め、どう活かしていくかは、私たちの未来を左右する大きな課題であると言えるでしょう。ギャップを「違い」として分断するのではなく、「可能性」としてつなげていくことが、より豊かな社会の実現につながると信じています。
以上
※本稿は筆者の個人的な見解を掲載するものです。









