JSA 一般社団法人日本船主協会
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オピニオン

2026年1月1日

長澤会長

2026年新春を迎えて

日本船主協会 会長
長澤 仁志

新年を迎え、謹んでお慶び申し上げます。

2026年の年頭にあたり一言ご挨拶申し上げます。

わが国の海運業を取り巻く環境は、近年、不確実性と不安定性を増す一方です。昨年は米国第2次トランプ政権の誕生後、関税政策の影響から荷動きは乱高下を繰り返し、高額な入港料の提示にも悩まされました。IMO(国際海事機関)では、GHG排出削減のためのIMOネットゼロフレームワーク(Net-Zero Framework:NZF)の採択が見送られました。

また、地政学リスクの常態化が、国際的な海上輸送の安全と安定を脅かしています。日本の貿易量の99%以上を担う海運業は、国を支える生命線であり、航行安全の確保は不可欠です。

しかしながら、困難な環境下においても、わが国の海運会社は、日本の産業と国民生活の基盤である安定的な海上輸送を継続する使命を果たすべく邁進しておりますので、当協会もその一助となるよう、本年も海運業界を取り巻く諸課題に一つ一つ着実に取り組んでまいります。

まずは、航行安全の確保です。ハマスとイスラエルの軍事衝突は2025年10月9日に停戦合意しましたが、日本関係船は依然として紅海の航行を自粛し、喜望峰経由への迂回を余儀なくされています。中東以外でも、ロシアによるウクライナ侵攻、ソマリア沖・アデン湾周辺海域の海賊事案や、マラッカ・シンガポール海峡での盗賊事案が発生しています。厳しい環境の中で護衛にあたる自衛隊や海上保安庁の皆様に深く感謝を申し上げるとともに、引き続きのご支援をお願い申し上げます。

続いて、環境問題への対応です。2025年6月26日にはシップリサイクル条約(香港条約)が発効し、安全かつ環境に配慮したシップリサイクルを実現する国際的枠組みが本格始動しました。当協会は、日本政府や日本海事協会をはじめとした国内外の関係者と連携し、主要解撤国の施設視察や改善促進等を通じて、条約に基づく体制整備を支援しました。

2025年10月のIMOのMEPC(海洋環境保護委員会)臨時会合では、2050年頃の船舶からの温室効果ガス排出ネットゼロを達成するための中期対策であるNZFの採択が1年延期され、2026年秋以降に持ち越されました。ただし、延期期間中も燃料強度に関するガイドライン等関連制度の詳細化が加盟国間で進められます。当協会としても引き続き、脱炭素への歩みを止めることなく、国際的な議論に協力してまいります。

世界単一市場の海運にとって、「海運自由の原則」確保は不可欠です。米国通商代表部(USTR)は2025年2月、中国の造船業等の不公正な慣行を理由に、通商法第301条に基づき中国関係船舶に入港料を課す対抗措置案を発表し、4月には非米国建造の自動車運搬船もその対象に追加しました。当協会は、日本の海運業界と関連業界への深刻な影響を懸念し、USTRに同措置の撤回を求めるべく、国際海運会議所(ICS)やアジア船主協会(ASA)を通じた積極的な意見発信に加え、国内関係団体とも連携して、日本政府に米国政府への働きかけを繰り返し要請しました。USTR措置は10月14日から適用開始されたものの、米中首脳会談の合意を受け、11月10日から1年間適用停止となりましたが、措置自体は撤廃されていないため、当協会は今後も関係者と連携し、動向を注視してまいります。

また、海運や造船等、わが国海事産業群の強靭化は、島国日本の暮らしと経済に不可欠です。2025年10月、当協会を含む海事産業群4団体は、国交省等に我が国造船業再生に向けた要望書を提出しました。今般策定された総合経済対策には、造船業再生に向け官民連携して総額1兆円規模の投資を目指す基金創設も盛り込まれました。さらに、令和8年度税制改正では、当協会が重点要望事項としていた外航船舶の「特別償却制度」及び「買換特例制度(圧縮記帳)」の延長も認められました。経済安全保障上で重要な役割を果たす日本籍船においては、その制度上の課題から当協会加盟船主でも限られたメンバーしか持てず、これ以上の維持・増加が困難な状況です。2025年6月に当協会から国交省に要望した「日本籍船保有に係る諸制度の抜本的な改善」につき、同省と連携しより一層の取り組みを進めていく必要があります。引き続き、当協会はわが国海運、そして海事産業群の国際競争力強化に向けた環境整備に取り組んでまいります。

海運の未来を支える人材の確保・育成も、喫緊かつ重要な課題です。日本人外航船員は現在2千人強にまで激減しています。この状況に対し、外航海運3社(日本郵船、商船三井、川崎汽船)と当協会は、JMETS改革を後押しし、日本人船員の養成・確保を強化するため、2030年頃の竣工を目指す大型練習船の寄贈検討を開始しました。引き続き、船員養成機関で学ぶ学生たちが将来に希望を持ち、海運業界を志すことができるよう、産学官が一体となり、若年層へのキャリア支援を積極的に進めてまいります。

わが国の貿易量の99.5%が海上輸送に頼っているという事実は、海運が日本の経済安全保障にとって不可欠な存在であることを示しています。海運・造船・舶用といった海事産業群全体が密に連携し、その強靭化に向け真剣に取り組んでいく必要があります。当協会は、わが国の海運が「国民の信頼に応え続ける存在」であり続けるよう、全力を尽くす所存です。

本年も皆様のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げますとともに、ご健勝とご多幸を心よりお祈り申し上げます。

以上

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