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2026年6月1日

篠原理事長

「こんなことも知らないの?」

日本船主協会 理事長
篠原 康弘

日本船主協会の理事長という、重いお仕事をいただいて、もうじき2年になります。

日本籍船制度の抜本改革、米国USTRの保護主義的政策への対応、IMO脱炭素議論の停滞、造船再生など、実に多くの、そして重い政策課題が次々に浮上し、その都度、皆様と一緒に知恵を絞りながら対応を重ねてまいりました。

そこに、2月末からは、ホルムズ海峡の問題も加わりました。これからトン税の見直し対応も本格化します。

これらの課題は、私たち民間だけでは解決できないため、政治や行政に動いてもらうことが不可欠になります。そのための対策会議の中で、皆さんから、数多くの、役所に対する不満やお叱りの言葉をいただいてきました。

「役人って、こんなことも知らないの?」

「役所って、どうして何度も、おんなじことを聞いてくるの?答える方の身にもなってほしい」

「政策を考えるのは役人の仕事でしょ。なんでこちらが案を作ってあげなきゃいけないの?」

私も40年近く役人をやっておりましたので、皆さんが、このような思いを押し殺しながら、役所の無理なお願いに対応いただいていたのだなと、今になって反省しきりです。

ただ、少しだけ、弁解じみた事情説明をお許しいただけたらと思います。

役所で各業界の対応をさせていただいている役人の数は、各業界で働く方の数と比較して圧倒的に少ないのです。知識も経験も乏しいのです。

例えば、外航海運を担当する外航課職員は26人ですが、外航海運業で働く人数は連結ベースで数えると6万人以上になると思われます。また、内航海運を担当する内航課職員は23人ですが、内航海運業は3千社・6万人〜9万人が働いていると言われています。

人数の少なさに加えて、役所の人間は、総合性も求められるため、2年程度の短期でいろいろなポストへと異動していきます。

そういう事情ですので、彼らが海運業界の実情を、業界の方と同じレベルまで理解し、行動に移すことは、なかなか容易なことではありません。

役人は、予算要求案や税制改正要望案を作成して、財務省などの関係府省と交渉し、予算を獲得したり、税制改正を実現したりすること、必要な法律案を作って国会で答弁をし、法律を成立させることが仕事で、この分野ではノウハウを持っています。これは私たち民間にはできません。

政治の応援も必要です。政治家の先生方は、それこそ日本の産業全体を、お一人お一人が相手にされています。先生方がお一人だけのお力で日本の政策課題の全てを把握し、行動していただくことは不可能です。

とすれば、私たちが望むことを形にするには、役人や政治家の先生方に、わかりやすく、彼らの行動のための材料を提供する必要があります。「このくらい知っているだろう」では残念ながらダメで、基礎知識がない方にも、「この問題は放置できない」「なんとかしなければならない」、という強い問題意識を持っていただき、どうしたらいいのかという対策の方向性まで、提案型で準備する必要があります。

私たちと同じ強さで、政治や行政に政策実現をしなければと思っていただくため、皆さんと一緒に、これからも努力を重ねていきたいと考えています。

以上
※本稿は筆者の個人的な見解を掲載するものです。

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