ソマリア沖・アデン湾における海賊問題
ソマリア沖・アデン湾における海賊事件は、2007年頃から急増しはじめた。その特徴は、機関銃やロケット砲といった重火器で武装し、船舶ごとハイジャックして身代金を要求するというもので、極めて悪質である。 アデン湾における海賊事件の発生件数を見ると、2007年には47件(うちハイジャック11件)であったが、2008年には111件(同42件)、さらに2009年には217件(同47件)とこの3年間で5倍増となっている。
(1)当協会の要望活動 上述のような海賊事件の急増に加え、2008年4月に日本籍大型タンカーがソマリア沖で海賊と見られる不審船に襲撃されたことを受け、当協会は冬柴国土交通大臣(当時)に航行安全の確保を要望したが、その後も同海域の海賊事件が頻発したため、2008年10月にも金子国交大臣(当時)に海賊防止のために効果的・具体的な対策を講じるよう要望した。 一方、国連の安全保障理事会は事態を重く受け止め、2008年10月、各国に海賊対策のため軍艦や軍用機を配備するなどの対応を促す決議を採択し、これを受けて有志連合軍(CTF151)、EU軍のほか、ロシア、インド等十数カ国が約20隻以上の艦船を派遣した。 このような国連安保理の決議を追い風とし、当協会は2009年に入ってからも、麻生総理大臣(当時)、河村内閣官房長官(当時)、浜田防衛大臣(当時)等の閣僚や、超党派の国会議員で構成される海事振興連盟に対して海上自衛隊艦船の派遣を要望した。
(2)海上自衛隊による海賊対処活動 政府は、2009年1月28日、安全保障会議において自衛隊法第82条による海上警備行動の発令により海上自衛隊を派遣する方針を固め、3月13日に海上警備行動を発令した。翌14日、護衛艦「さみだれ」「さざなみ」の2隻がソマリア沖・アデン湾へ派遣されるとともに、5月28日にはP-3C哨戒機2機がジブチに派遣され、アデン湾海域での海賊対処活動が開始された。 さらに、6月24日に海賊行為の処罰および海賊行為の対処について規定する新法が恒久法として公布され、その1ヵ月後の7月24日に施行された。第2陣として派遣された護衛艦「はるさめ」「あまぎり」は、7月28日より同法による海賊対処行動に基づく護衛活動を開始した。同法により、外国関係船舶を含むすべての船舶の護衛が可能となった。 なお、これら海上自衛隊艦船による護衛は、護衛対象の商船が船団を組み、この前後を護衛艦が伴走する形で行われている。
ソマリア沖・アデン湾における海賊問題の概要 (PDF: 1.7MB)
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