JSA 社団法人日本船主協会
文字サイズを変更する
小
中
大

Home海賊問題 海賊インフォメーション >2010年上半期IMB報告の概要

海賊問題

ソマリア海賊、アデン湾周辺に発生海域が拡大
―2010年上半期の海賊事件発生状況―
 今般、国際商工会議所(ICC:International Chamber of Commerce)の下部組織である国際海事局(IMB:International Maritime Bureau)より、2010年上半期にIMB海賊情報センター(クアラルンプール)に連絡のあった海賊事件の報告書が発行されましたので、概要を以下のとおりお知らせします。
 政府等関係機関に対する防止対策強化の要請に資するため、関係各社におかれましては、事件に巻き込まれた際は関係先への通報の実施をお願いいたします。

2010年上半期IMB海賊レポート概要
 全世界における2010年上半期の海賊事件報告件数は196件となり、昨年上半期の240件と比べ約2割減少した一方、ハイジャックは昨年同期と同数の31件発生し、38人増の597人が人質となった。地域別に見ると、アフリカ地域で全体の6割を占める114件が発生し、依然最も危険な地域に変わりはないが、2003年以降減少を続けてきた東南アジア地域において昨年同期を上回る事件の発生があった。
 
<アフリカ地域>
 2010年上半期の海賊事件の減少(前年同期比44件減)は、概ねアデン湾における減少分(同53件減)となっている。一方、ソマリア周辺海域およびインド洋では同7件増加した。アデン湾における海賊事件の減少は、各国艦船等の海賊対処活動によるほか、各船舶が実施すべき海賊対策(Best Management Practice)が海運業界および海軍の協力グループによって策定され、実行されたことによる。
 2010年、ソマリア海賊は、アデン湾において11隻、ソマリア周辺海域において16隻のハイジャックに成功し、544人を人質にとった。
 また、ソマリア海賊は船舶の襲撃能力を向上させている。東経69°以東においてハイジャックに成功したほか、未遂に終わったものの南緯12°以南における襲撃が報告されている。モンスーンは海賊活動範囲に影響を与え、モンスーン時季に入ると、その影響を受けない紅海南側での事件の発生が多くなる。
<東南アジア地域>
 南シナ海では、海賊事件の発生が前年同期に比べ倍増しており、ハイジャック1件を含む15件が発生した。また、インドネシアでは前年同期の3件から16件に増加した。多くは航行中、錨泊中または荷役中に侵入し、金品を強奪して逃走する泥棒であるが、船員に対する危険性は依然高く、IMBは警戒を怠ることのないよう注意を喚起している。
<その他の地域>
 バングラディシュ・チッタゴン港における海賊事件も前年よりわずかに増加しており、停泊・錨泊中の警戒が未だ必要な状況である。
([表1-4]参照)

[主な事件の概要]
(1) 4月25日、パナマ籍原油タンカー“Isuzugawa”が、ペルシャ湾から日本に向けアデン湾東方沖約760マイルの海域(アラビア海)を南下中、自動小銃とロケットランチャーで武装した海賊から追跡および銃撃を受けた。本船は回避行動(ジグザグ航行等)をとり、海賊の襲撃を振り切った。本船は銃撃により軽微な船体損傷を受けたが、航行に支障はなく、目的地へ向け航行を継続した。
当該海域において続けて他2件の未遂事件の発生があり、ペルシャ湾就航船においてもソマリア海賊への警戒を強める契機となった。

(2) 5月5日、リベリア籍原油タンカー“Moscow University”が、ソマリア東方沖約300マイルの海域において武装した海賊から追跡および銃撃を受けた。海賊は本船への乗り込みに成功、本船では艦艇に救援を要請するとともに、乗組員を操舵機室に避難させ篭城した。その約24時間後にロシア海軍が強襲し本船を奪還、海賊を拘留した。本船は船体に損傷を受けたが、乗組員は無事であった。

(3) 6月24日、マーシャル諸島籍コンテナ船“YM Taichung”が紅海南端のBab El Mandeb海峡を航行中、4隻の海賊ボートが接近してきたため、船長は本船の速度を上げ、海賊防止対策をとった。海賊ボートは約21.5ノット(約38.7km/h)のスピードで本船船首に回り込み、さらに4隻の海賊ボートの接近が確認された。船長は最大速力まで上げるとともに、海賊回避の操船を行った。海賊ボートはスピードを落とし、追跡をあきらめた。
6月以降の夏季モンスーン時季に入ってから、紅海での海賊発生件数が急増している。いずれも未遂事件であったが、2010年上半期の件数15件のうち、9件は6月に発生した。

(4) 4月7日、南シナ海のMangkai島沖を航行中のシンガポール籍原油タンカー“Theresa Libra”に、蛮刀等で武装した8人の海賊が侵入した。海賊は、当直航海士および船長を人質にとり、乗組員所有の金品を強奪して逃走した。 南シナ海における海賊事件数は2009年より増加している。2008年の発生件数はゼロであったが、2009年は13件、2010年は上半期で15件を数えた。

[表1]海賊発生件数推移
表1海賊発生件数推移

[表2]世界各地域の海賊発生件数の比較
表2世界各地域毎の海賊発生件数の比較

[表3] 乗組員・乗客の被害状況(過去3年同期比較)
被害状況2010
被害状況2009 被害状況2008
[表4]世界の主な海賊発生地域
世界の主な海賊発生地域
  • オピニオン
  • 海運政策・税制
  • 海賊問題
  • 環境問題
  • 各種レポート
  • IMO情報
  • ASF情報
  • 海事人材の確保