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海賊問題

海賊発生件数は最低記録を更新
—2013年の海賊事件発生状況—
 国際商工会議所(ICC)の下部組織である国際海事局(IMB)は、2013年に世界で発生した海賊等事案について報告書を発行しました。これらの概要は以下のとおりです。
なお、政府等関係機関に対して防止対策の強化を要請する上で、海賊事件の実態把握が重要となります。関係各社におかれましては、海賊事件に巻き込まれた際には、関係先への通報を徹底いただきますよう、よろしくお願いいたします。

2013年IMB海賊レポート概要
 2013年に報告のあった海賊事件は、264件と前年より僅かに減少(前年比約11.1%減)し、2008年以降では最低となった。(表1参照)
 ソマリア海賊による事件が2012年以降から激減していることにより、全体的な発生件数も減少傾向にある。アフリカ海域における海賊事件発生件数も2012年には150件報告されていたが、2013年は79件と激減(前年比約47.3%)している。IMBでは海賊発生件数の減少は海陸における連合軍の活動や民間武装ガードの起用など有効な防衛手段による効果の表れとしている。一方2013年では、発生件数は減少しているものの、海賊事件発生海域が広域化傾向にあることへの懸念が示されている。IMBでは海賊発生件数は減少しているものの、不審船の存在が報告されていることなどから、引き続き適切な海賊対策と襲撃への警戒を実施する必要がある、と強調している。また、東南アジアにおいては、昨年に引き続き増加傾向にあり、前年比約23%増の128件となった。(表2参照)
 アフリカ海域での海賊事件発生件数が減少していることにより、被害に遭った乗組員・乗客の数も大きく減少し、2013年は373名(前年比約44%減)、人質に関しても304名(前年比約48%減)となった。(表3参照)
 なお、発生海域別にみると、全体では1位インドネシア 106件、2位ナイジェリア 31件、3位インド 14件とアフリカ、東南アジアでの事件が顕著であった。またハイジャック件数も減少し(前年比約57%減)、全体で12件報告されているうち、アデン湾とソマリア沖でそれぞれ1件、ナイジェリア、コートジボワール、トーゴではそれぞれ2件とギニア湾沿岸諸国での発生が顕著となった。(表4参照)
 全体的な海賊事件発生件数では、アフリカ海域の事件が減少傾向である一方で、東南アジアでの事件は増加傾向にある。  

<アフリカ地域>
 紅海を含むソマリア周辺海域における海賊事件は、前年の75件から15件へ、また、同海域におけるハイジャック件数も前年の14件から2件へと大幅に減少した。一方、ギニア湾沿岸諸国全体の発生件数は51件と、前年に比べ顕著な変化は見られないが、ナイジェリアが31件と増加傾向にある。
ソマリア海賊による事件件数は、各国政府による海賊対処活動やBMPの徹底など各商船による海賊対策の強化、民間武装ガードの採用等により大幅に減少したが、脅威は依然として大きく、活動も広範囲に及ぶため、海軍や各商船による警戒は不可欠である。
また2013年の銃撃事件は全体で22件が報告されており、その内21件がアフリカ海域で発生し、また、ハイジャック発生件数も、全体で12件が報告されており、その内9件がアフリカ海域で発生していることから、IMBでは、依然として危険海域との認識に変わりはない、と強調している。

<東南アジア地域>
 東南アジアにおける海賊事件は2010年以降増加傾向にある。シンガポール海峡、マレーシアでは、それぞれ9件と昨年に比べ大きな増減はないが、全体としては前年の104件から128件に増え、前年比23%増となった。特にインドネシアでは2009年以降、海賊事件が増加を続け、前年から約31%増の106件の窃盗事件が報告されている。

<その他の地域>
 2012年に比べ、南米でも減少傾向となった。またバングラデシュにおいては前年より1件増加したものの、同国沿岸警備隊による警備強化によりここ数年大幅に減少している。しかし、武装強盗による活動は未だ散見される状況で、チッタゴン周辺での停泊時には注意が求められている。

[主な事件の概要]
(1) 2013年6月5日、0530UTC頃、アデン湾ソマリアBosasso北方沖20マイル(11-36N、049-15E)でインド船籍のダウ船“Shahe Faize Noori”がハイジャックされ、14名の乗組員が人質となったが、数時間後に海賊はダウ船と乗組員を突如解放し、逃走した。解放した理由は不明とされているが、ダウ船及び乗組員全員の無事が確認された。

(2) RTCを西航中(12-52N,047-52E)の香港籍バルクキャリアーが5人の海賊が乗船したスキフに襲撃された。本船は警笛を鳴らし、緊急増速や放水などの回避行動をとりながら、便乗者をシタデルへ避難させた。乗船していた武装ガードも配置につき、海賊へ武器の携帯を示し警告弾をスキフに放ったが、海賊は追撃を継続した。スキフが本船へ接近したため武装ガードが警告射撃を行ったところ、海賊も小銃で応戦してきた。武装ガードも海賊に対し再度警告射撃を行い、また、軍用ヘリコプターも応援のため現場に駆けつけたことから、海賊は追撃を諦めた。

(3) (3) 2013年3月28日、0746UTC頃、イラン籍漁船“FV Saad I”は航行中に6名の武装した海賊にハイジャックされた。(11-52N,051-18E)20名の乗組員が人質となったが同日中に乗組員は救出され、本船と乗組員全員の無事が確認された。

[表1]海賊発生件数推移
表1海賊発生件数推移

[表2]世界各地域の海賊発生件数の比較
表2世界各地域毎の海賊発生件数の比較

[表3] 乗組員・乗客の被害状況(過去3年比較)
乗組員・乗客の被害状況

被害状況2011

被害状況2012
被害状況2013

 

[表4]主要発生海域
[表4]主要発生海域

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