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プレスリリース

2008年6月18日
社団法人日本船主協会

日本船主協会 第61回通常総会 前川会長挨拶

第61回総会にあたり、ご挨拶申し上げます。
 はじめに、この1年日本船主協会がその直面する課題に積極的に取組めたこと、なかでも、トン数標準税制がわが国に導入されることが決定したことはひとえに関係の皆様の積極的なご協力・ご支援の賜物であると厚く御礼申し上げます。
 私が会長に就任する前年の税制大綱において実質的に導入に近い位置づけとなるまでに大きく一歩を踏み出した上に築かれた成果でありますが、会長としてこの歴史的瞬間を迎えられたことは誠に喜びにたえません。
 私は、わが国の海運が国際競争力を持ち続けることが、日本経済ひいては世界経済に資すると考えております。そして、トン数標準税制の導入はこの大きな一助になるものと確信しております。
 一方、国際競争条件の均衡化を図ることにより、日本籍船・日本人船員(海技者)を増加させ、安定的な国際海上輸送の確保を図るという国会と政府からの外航海運業界へのメッセージを真摯に受け止めておりますし、事業の推進により環境に与えてしまう負荷については国際社会の一員として環境保全対策の推進に一層貢献していかなければならないことも肝に銘じております。
 したがいまして、本日の総会決議におきまして、私どもが取り組むべき課題として列挙した項目の中でも、次世代日本人海技者の確保への対応とGHG(温室効果ガス)の効果的かつ実効性のある削減に向けての関係当局や関係業界との連携強化については、日本船主協会として本格的に息の長い取組みを行っていくことを決意いたしました。

それではここで、私が昨年会長に就任して以来の課題を項目毎に振り返るとともに、今後の取組みについて説明申し上げます。
第一にトン数標準税制の構築をはじめとするわが国外航海運の国際競争力の維持・強化です。
 トン数標準税制につきましては、衆参両院の国土交通委員会においてお取りまとめいただいた附帯決議の考え方に沿い、事業者にとって使い勝手の良い制度構築がなされるものと期待しております。より多くの海運会社が同税制を使いこなして、わが国外航海運の国際競争力の底上げをはかるものにしていただきたいと思います。
 また、同じく附帯決議にて示していただいた船舶の特別償却制度につきましては、わが国海運企業の国際競争力確保のために最低限必要な制度ゆえ、制度の存続を確実なものにするべく関係方面に働きかけていきます。

第二に、次世代日本人海技者の確保への取組みを核とする船員問題への適切な対応を挙げさせていただきます。
 昨年6月に国際船舶における外国人承認船員の就業範囲の指定が船長・機関長に拡大される旨の通達が発出され、全乗外国人船員の国際船舶の運航が制度上は可能となりました。また、それと軌を一にして、官労使により実施されている外航日本人船員(海技者)確保・育成スキームについても、昨年10月より第1期生の育成が開始されました。私どもは、わが国海運界各方面で顕在化しつつある日本人船員・海技者の不足に対処することが何よりも大切なことと認識し、新たな組織として「人材確保タスクフォース」を当協会内で立ち上げ、この問題に本腰を入れていきます。具体的には、大学/高専/海員学校への志望者拡大に的を絞った広報活動や、教育機関との連携・支援に地道に取り組むとともに、船員・海技者の世界に若者をひきつける環境の整備に努力してまいります。一方で、トン数標準税制導入に伴う日本籍船増加に対応して、外国人船員に対するわが国海技資格承認の必要性が急激に高まることに呼応して、外国人への承認資格の付与制度の改善を働きかけて参ります。

第三に、環境保全の推進に積極的に取り組むことが、船主協会のこれから非常に大きなテーマとなっていきます。
 昨年度は、NOXおよびSOXの次期規制の枠組みや具体的規制についての検討がIMO(国際海事機関)で進められ、当協会は、わが国政府代表団の一員としてこれに参画し、現実的な規則となるよう努めました。現在、IMOでは、2009年の合意形成を目指して、船舶から排出されるGHGの削減に向けた議論が活発化しています。この議論に資するための様々な協力を当協会はしております。そうした活動をさらに加速させていくために、環境問題に対応する新しい組織をつくり、関係当局や関係業界との連携を強化し、効果的かつ実効性のある対策が早急に構築されるよう努めてまいります。

第四に安全運航に引き続き力を尽くしていきたいと考えます。
 昨年も同様に決議項目の筆頭に挙げましたが、海上運送の安全を確保するということは船社が存続していくための大原則です。船体構造基準、貨物タンクの防食措置をはじめとするさまざまな安全基準にかかる国際的な合意に向けた検討への積極的な参加に努め、加盟各社においても、ハード・ソフト両面から安全運航対策を徹底してまいります。
 また、2007年9月にマラッカ・シンガポール海峡の航行安全・環境保全に関する国際的な協力の枠組みが設定され、沿岸3ヵ国主導の下その具体化が進められております。当協会は、同海峡の安全確保を図るため、引き続き、航行援助施設の整備事業に協力するとともに、多くの海峡利用国・利用者等が参加する実効ある国際協力体制が形成されるよう、関係当局等と連携して取り組む所存です。

第五は経済・社会の変化に即した構造改革の実現です。
 特に水先制度の更なる構造改革は何としても実現しなければなりません。水先制度は平成19年4月施行の改正法により、料金はこの4月から上限認可制となりました。
 我どもが求めていたものは、水先業務運営の透明性の確保や効率化であり、それを実現するための競争原理の導入でした。
 しかしながら、根本的なところで競争が起こりにくい仕組みが温存されたため、競争原理は機能せず、料金の多様化は一切見られておりません。
 これはまさに既得権益による高コスト構造ともいうべきものであり、わが国港湾の国際競争力の観点から、船舶交通の安全確保を第一義としながらも、市場原理が機能する制度となるよう、引き続き改革に取り組んでいく所存です。

第六に、国際問題へ適切に対応していきたいと考えます。
 安全運航の項目で申し上げたマラッカ・シンガポール海峡の航行安全問題をはじめ実効ある国際協調体制の構築がますます重要になってきました。今月はじめに海南島で開催されたアジア船主フォーラム(ASF)第17回総会においては、IMOをふくむ国際場裡での議論にアジア船主の意見を反映すべく、アジア各国の船主協会に対し、ASFの意見を自国政府に明確に提示するよう求めていくこととしました。また、外航船社間協定に対する独禁法適用除外制度に関わる諸外国の動向については、国際海運会議所(ICS)等の国際団体とも連携して対応して参ります。

最後になりますが、内航海運に係る諸問題への対応にも力を尽くしていく所存です。
 内航海運につきましては、船員が高齢になりつつあるため、船員確保対策が喫緊の課題であります。「人材確保タスクフォース」においても、検討課題として位置づけております。内航燃料油の高騰問題につきましては、燃料費の上昇が多くの内航事業者に深刻な影響を及ぼしていることから、昨年も国土交通大臣および国土交通副大臣に、日本内航海運組合総連合会、日本長距離フェリー協会との連名にて、窮状を訴えました。引き続き、内航部会を中心に、関係各方面に対し支援を要請するとともに、必要な規制改革や税制等の措置につきまして、関係者で対応してまいります。

任期中に仕上げなければならない課題に加え、息の長い取組みが必要な課題も多く挙げさせていただきました。私と同じ61周年を迎えた日本船主協会が更なる発展をするためにどれも避けて通れないものと存じます。全力を尽くしてまいる所存ですので、引き続き関係者の皆様のご支援とご指導を賜りますようなにとぞお願い申し上げます。

第61回通常総会決議

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