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Homeプレスリリース&トピックス2008年 > EUコンソーシア規則改定案に対する日本船主協会コメントについて(11月27日)

プレスリリース

2008年11月27日
社団法人日本船主協会

EUコンソーシア規則改定案に対する日本船主協会コメントについて

2000年に施行された、コンソーシア(含むアライアンス)に対するEU競争法包括適用除外を規定する欧州委員会規則(以下「823/2000」)は5年毎に見直されており、現行規則の有効期限は2010年4月25日までとなっております。
 欧州委は、現行規則が定期船同盟制度の存在を前提としているため、欧州理事会規則4056/86(定期船同盟に対するEU競争法の包括適用除外を規定)の廃止前から823/2000の改定作業に着手し、08年10月21日、その改定案及び“Technical Paper”(規則変更点説明文書)をEU官報に掲載するとともに、同年11月21日を期限に関係者から同改定案に対するコメントを募集しました。
 当協会は、コンソーシアに対する包括適用除外制度は質の高い定期船サービスを提供し、多様な荷主のニーズに応えるためには不可欠であり、EUが除外規則をより長期に亘り維持すること等を要望する内容のコメントを11月21日、欧州委員会に提出致しましたので、本文(英文)および和訳を添付の上、お知らせ致します。

以上

本件に関するお問合せ先 社団法人日本船主協会 企画部

Tel:03-3264-7180 水島


平成20年11月21日
欧州委員会に提出

コンソーシア規則案に対する日本船主協会コメント

 日本船主協会は、2008年10月21日付EU官報で公表された、「特定の分類に属する定期船社間の協定、決定及び協調行為(コンソーシア)に対するEC条約81条3項の適用」に関する規則改定案(以下「規則案」)について、欧州委員会に対し以下コメントを提出する機会を得たことに感謝する。当協会は、日本国籍を有する109社の海運会社を会員とする全国的な海運事業者団体である。
 当協会は、コンソーシア制度は純粋に運航・運営に関する取り決めであり、運賃やチャージなど商業的な協議を伴わないものであると認識している。コンソーシアの概念は、共同運航を通じ、海上輸送サービスの生産性と質の大幅な改善に資する有効な手段として、主要貿易国・地域において広く受け入れられているところである。当協会は、持続可能な世界貿易を支え、顧客の要請の変化に柔軟に対応するためには、コンソーシアに対するEU競争法の包括適用除外が不可欠であると確信している。従って、コンソーシア制度を確保するための法的確実性を将来に亘り維持することが重要である。

1.マーケットシェア
 規則案前文4項によれば、同一航路で運営されるコンソーシア同士の協定は、マーケットシェアにかかわらず、コンソーシア規則の対象となっていないように思われる。これは、上記協定にEC条約を直接適用することを意味するものである。同協定の目的が、コンソーシア規則が禁止すべきコンソーシア間の競争を低減することではなく、需給変動に応じて航路サービスを合理化し、顧客の要請に対応する安定的なサービスを提供することであることを考慮すると、当協会は、コンソーシア同士の協定を“競争制限的な協定”の範疇に当てはめるべきではないと考えており、この種の協定についてもコンソーシア規則の対象にするよう要望するものである。
 更に当協会は、規則案第5条による、船社とコンソーシアのマーケットシェアの合算についても深刻な懸念を有している。同条は、「船社が同一の関連市場で単独のサービスとコンソーシアム内のサービスを提供している場合、当該船社の夫々のマーケットシェアを合算しなければならない」とし、更に「複数のコンソーシアが同一の関連市場で運営され、かつ共通のメンバー船社を有する場合、当該コンソーシア夫々のマーケットシェアを合算しなければならない」と規定している。
 定期船社は、刻々と変化する貿易およびビジネスの要求に対応するため、コンソーシア間で、或いはコンソーシアムのメンバー船社と他の船社との間で、多くの連携を確立している。仮に上記規則案による方法でマーケットシェアを計算すると、多くの場合において、規則案によるシェアの許容値である30%を容易に超過する可能性があり、それは結果的に、船社およびコンソーシアが船舶のキャパシティーの有効利用を目的に、他の船社やコンソーシアとの小規模なスロット交換を柔軟に検討することに対し暗黙の制限を課すことになりうる。また、荷主に対し多様なサービスを提供する上でも深刻な障害をもたらしうるものである。

2.荷主との協議
 コンソーシアム又はそのメンバー船社が提供する定期船輸送サービスの条件や質に関する主要な変更がなされる場合、現行慣習下においては、コンソーシアムの個々のメンバー船社とその荷主との間で協議を行っている。規則案第7条は(また、現行規則823/2000においても)、コンソーシアムと荷主又はその代表である荷主団体との協議開催を義務付けているが、当協会は、現行規則の下で許容されている個別船社と荷主との間の現在の協議慣習に対し、同7条が影響を及ぼすものではないものと理解する。
 当協会は、コンソーシアム内で結ばれる合意が何ら商業的協議を伴うものではないことを繰り返し申し述べたい。仮に規則案第7条が、コンソーシアムが荷主との協議に備え相談すべく一堂に会することを許容するという意味を含むのであれば、それは同規則3条(競争法上許容される協定の内容)の基本原則に矛盾することになりかねないものと考える。

3.結び
 当協会は、欧州委員会が、規則823/2000が船社及び運送利用者(荷主)双方に有効に機能していると認識されていることを認め、コンソーシア協定に対する競争法適用除外期間を(2010年から)更に5年間延長するよう提案していることに謹んで注目するものである。
 当協会は上述の通り、コンソーシアに対する競争法包括適用除外は、質の高い定期船サービスを提供し、多様な荷主のニーズに応えるために不可欠であると確信しており、コンソーシアムに対するEU包括適用除外規則がより長期間に亘り維持されることを強く求めるものである。

以上

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