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プレスリリース

2009年12月18日
社団法人日本船主協会

2009年海運界重大ニュース

○アデン湾での海賊対処のため海上自衛隊護衛艦が派遣される、海賊対処法も成立
 アデン湾・ソマリア東方沖では、機関銃やロケット砲等の重火器で武装した海賊による襲撃が頻発。
 わが国政府は日本関係船を護衛するため、2009年3月、自衛隊法に基づく海上警備行動を発令し、護衛艦2隻によるアデン湾での護衛が開始された。また、5月には、P-3C哨戒機 2機がジブチに派遣されている。
 その後、6月に「海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律」が成立(7月24日施行)、日本に関係のない外国船舶も対象とした護衛が開始された。
 海上自衛隊の護衛活動は、これまでに450隻以上の商船の安全航行に寄与し、わが国商船関係者のみならず、海外からも高く評価されている。
○世界同時不況の影響が続き、市況が依然として低迷
 海運市況はドライバルク船市況が持ち直しを見せたものの、コンテナ船・タンカーの市況は昨年秋の金融危機に伴う世界同時不況の影響が続き、依然として低迷している。特にコンテナ船事業は、海外有力船社をはじめ、その多くが巨額の赤字を計上した。日本の海運各社にとっては、円高の追い討ちもあり、事業環境は極めて厳しく、船隊規模の縮小等あらゆるコストの削減に取り組んでいるものの、2010年3月期の通期決算予想は極めて厳しいものになっている。
○国土交通大臣の主導により、「国土交通省成長戦略会議」を設置
 前原国土交通大臣主導の下、わが国のリソースを有効活用し、国際競争力を向上させるための成長戦略を確立することを目指す「国土交通省成長戦略会議」が2009年10月に設置された。同会議の5つの検討課題の1つとして「海洋立国日本の復権」が掲げられ、外航海運および港湾の国際競争力強化をテーマとする3つの検討委員会が設置された。
 当協会は、これまでイコールフッティングの実現による国際競争力維持・強化の観点から税制をはじめ様々な施策の要望を行っており、今般、この会議が国際競争力に主眼をおいて検討を開始したことを高く評価し、2011年度予算・税制改正への反映を目指すべく積極的に審議に参画している。
○シップリサイクル条約が採択される-安全かつ環境上適切な解撤の実施に向け前進
 国際海事機関(IMO)では、2005年11月開催の第24回総会以降、船舶のリサイクルにおける環境汚染や労働災害を防ぐ観点から、新たな条約を策定すべく検討が行われてきた。
 その結果、2009年5月、香港において、「2009年の船舶の安全かつ環境上適正な再生利用のための香港国際条約」(以下、シップリサイクル条約)が採択された。
 シップリサイクル条約は早ければ2012年度中にも発効すると予想され、発効後5年以内に現存船へのインベントリ(船内にある有害物質の一覧表)の備え付けが義務付けられていることから、インベントリの円滑な作成体制の整備に向け、関係者による協議・連携が不可欠となるほか、条約批准のための国内法の整備等国内的な対応が急がれている。
○国際海運におけるGHG削減/大気汚染防止に向けた本格的な検討開始
 国際海事機関(IMO)では、国際海運分野における温室効果ガス(GHG)の排出削減や大気汚染防止等に関する検討が活発に行われた。
 船舶からのGHG排出削減対策については、新造船の燃費性能をインデックス化するエネルギー効率設計指標(EEDI)や効率的な運航を促す船舶エネルギー効率管理計画(SEEMP)等のツールが開発されたほか、燃料油課金等の経済的手法についても、その選定に向け2011年までの作業計画が合意された。
 一方、今後段階的に厳しい規制値を課すこととなっている船舶からの窒素酸化物(NOx)、 硫黄酸化物(SOx)、粒子状物質(PM)については、一般海域よりも更に厳しい規制を課す排出規制海域(ECA)として米国・カナダの沿岸200海里を指定する海洋汚染防止条約(MARPOL条約)附属書VI改正案が承認され、2010年3月のIMO会合において採択される見通しとなった。
○トン数標準税制の適用始まる-10社が認定
 トン数標準税制の根拠法である改正海上運送法等の成立・施行を受け、2009年1月末までに、当協会会員である外航海運事業者10社が、トン数標準税制の認定申請を行った。国土交通省海事局による審査の結果、全社が認定され、4月1日よりわが国において初めてトン数標準税制の適用が実現した。
○外国人船員承認試験をインド、ブルガリアにおいて初めて実施
 外国人船員の承認海技資格取得制度の合理化・簡素化のため、STCW条約の締約国が発給した資格証明書を有する者にはわが国の海事法令の周知のみによる承認証発給とすることを当局に求めていたことを受け、国土交通省は、2008年11月、承認試験の実施回数の増加および実施国の拡大、さらに民間委託等を盛り込んだ報告書を取りまとめた。
 これにより、従来フィリピン(マニラ)においてのみ実施されていた承認試験を、本年初めてインド(ムンバイ)およびブルガリア(バルナ)でも実施するともに、試験期間も短縮した。
 今後も使い易い制度に向け更なる合理化・簡素化を求めていく。
○適切な市場環境の整備に向け水先人指名制トライアル事業を実施
 水先制度改革の一環として、2008年4月より水先料金は上限認可・届出制へと移行するとともに、併せて水先人指名制が導入されたが、こうした制度上の改正が行われたにもかかわらず、十分に機能していない状況であったことから、当協会は改善に向けて、関係各方面への働きかけを行ってきた。
 このような状況下、2009年2月に交通政策審議会海事分科会船員部会水先小委員会が設置され、水先制度における指名制を有効に機能させ、水先料金の柔軟な設定を可能とするような新たなルールの形成に向けた審議が進められ、同年6月25日開催の第4回会合において、当面「指名制トライアル事業」を実施することが適当とする報告書が取りまとめられた。
 これに沿って7月以降、東京湾、伊勢三河湾、大阪湾、内海の4水先区で順次同事業が開始され、その後、12月には新たな料金での事前指名契約の締結もあり、今後の拡大が期待されている。
○内航海運不況対策が予算措置される一方、モーダルシフトに逆行する高速道路料金無料化および地球温暖化対策税制問題が浮上
 2008年後半以降の世界的不況による影響で内航荷動きが激減したことなどから内航海運の不況対策として、政府補正予算による高齢船の解撤促進のための「緊急老朽船処理対策促進事業」、新規建造促進策としての「内航船舶共有建造スキーム」、「船員雇用の対策」等が実施され、その効果が期待されている。
 しかしながら、一方では、2008年より実施されてきた高速道路料金の引下げによる、RORO船やフェリー等による輸送量の減少に加え、モーダルシフトをさらに逆行させることとなる高速道路料金無料化の動きが浮上した。また、地球温暖化税制導入議論が浮上してきたことで、内航船のコストの相当割合を占める燃料費の一層の負担増の可能性が出始めてきた。
 これらの動きは、内航海運に甚大な影響を及ぼしかねないものとなるため、内航総連合会をはじめとした海運関係団体では、政府をはじめ関係方面に対し、これらへの反対運動を展開した。
○2010年度税制改正では大旨現行制度が維持、一部恒久化
 2010年度政府税制改正大綱において、2010年3月末をもって適用期限を迎える「国際船舶に係る登録免許税」については、現行の軽減税率2.5/1000を3/1000に引上げた上で延長、さらに「外航用コンテナに係る固定資産税」については軽減措置(課税標準4/5)を現行通りとした上で恒久化が認められた。また、内航関係の「中小企業投資促進税制」や「外貿埠頭公社に係る特例措置の延長及び指定会社等に係る特例措置の拡充等」についても大旨、要望内容での存続・拡充が認められた。
○ASF次期事務局長を日本船主協会から選任
 アジア地域の船主間の相互信頼と協力関係の育成を目的として、1992年に当協会の提唱で設立されたアジア船主フォーラム(ASF)では、次期事務局長に、当協会の園田裕一常務理事を選任した(任期は3年)。同氏は2010年1月1日から次期事務局長(Secretary General Designate)として、事務局のあるシンガポールで活動を開始する。
○DVD「海の上のプロフェッショナル」制作等日本人船員(海技者)の確保に努力
 当協会は、優秀な日本人船員(海技者)の確保のため、海事教育機関と連携し、2009年7月、「船員の仕事と魅力および商船系学校を紹介するDVD・小冊子」を制作。関係方面に広く無料配布し、普及・啓蒙活動を一層強化した。また、国立商船高等専門学校の合同進学会ガイダンス等昨年から始めた事業も継続して実施した。
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