JSA 社団法人日本船主協会
文字サイズを変更する
小
中
大

Homeプレスリリース > 2011年5月27日

プレスリリース

2011年5月27日
日本船主協会

アジア船主フォーラム(ASF)第20回バリ総会について

 2011年5月24日(火)にインドネシア・バリ島で開催された題記総会に関するプレスリリース及び出席者リストを、添付の通り配布いたしますので、お取り計らい下さるようお願い申し上げます。

以上


to english
2011年5月27日

アジア船主フォーラム(ASF)プレスリリース
(日本船主協会事務局試訳)

アジア船主は、ソマリアの海賊による船舶と船員への攻撃が増え続けていることに苛立ち、怒り、そしてフラストレーションを表明。

「ソマリアの海賊及び船舶のハイジャックは、20年以上前にソマリア中央政府が崩壊して以来、手に負えなくなってきた。今こそ効果的な行動を取って海賊を根絶する時である。」と第20回ASF総会議長のJohnson W. Sutjipto氏は断言した。

ソマリア沖の海域は、ここ数年間でハイジャック、誘拐および強奪が急増したことでますます危険な場所になってきており、船舶と船員の安全を確保するため武装保安員の採用を余儀なくされている船主もいることにASFは強い懸念を表明した。

「しかし、それは必要なことだ。」とSILC委員長代行のRobert A. Ho氏は付言した。「船員を護るために武装保安員を乗船させることで潜在的に生じる様々な責任が定義されているが、それら責任を船長又は船主に負わすべきではない。なぜなら各国政府が十分な安全を担保することが出来ないか、またはその意欲がないため、彼らは武装保安員の採用を検討する以外に他の選択肢を持っていない。」

「かつて海賊はアデン湾の海域と“アフリカの角”沖の範囲に限定されており、そこで首尾よくやってきたが、段々と大胆になり、活動の範囲を拡大した。今こそすべての国の政府と国連、IMOが一致協力し、この犯罪行為をやめさせる時だ。我々は、このようなことが続くのをもはや容認することはできない。」とSNEC委員長のS. S. Teo氏は述べた。

SERC委員長の工藤泰三氏は、「海賊は、ハイジャックによる報酬が逮捕や処罰のリスクをはるかに上回ると見ているのは明らかだ。組織化された海賊が世界貿易に及ぼすコストは年間で70億から120億ドルになると見積もられており(注1)、この負担は断じて続けられるものではない。」と強調した。

2011年5月23日現在、26隻の船舶と522人の船員がソマリア沖で人質として身柄を拘束されており、中には極めて長期間拘束されているケースもあるとの報告(注2)があった。SC委員長のLi Shanmin 氏は、「ここ数カ月間、拷問、殺害など、船員に対する海賊の暴力行為は激化している。船員は高リスク地域を航行するため、船員自身やその家族に与える心理的な影響を軽視することはできない。」と述べた。

ASFは、海賊問題に対する一般の関心を高め、最終的には各国政府の海賊撲滅に向けた意欲を向上させることを目標とした、国際海事関係機関および団体による「Save Our Seafarers (SOS)キャンペーン」に参加することを全会一致で決定した。

さらにASFは、船員に敬意を払わない国があることに懸念を示し、海難事故、特に環境に影響を及ぼす事故によって船員が不当に扱われることや、船員が上陸許可を取得する際に各国で困難に直面するといったことが、船員に対する尊敬の欠如を表しているとした。

Ho氏は、「その事実は明白である」とし、「船員は審理を受ける以前に、事故による環境損害もしくは経済的損失によって裁かれている。しかしながら、通常の国際的な基準に照らせば、船員の重過失、故意または作為が認められた場合のみ刑罰に問われるべきで、有罪が立証されるまでは船員は無罪と考えられるべきである。」と述べた。

Li氏は、「船員は今なお世界の多くの港で、過度に複雑かつ無理のあるビザ取得要件のため、上陸を拒否され、また、乗下船が出来ない状況下にある。」と付言した。その一例として、フォーラムでは、明確なガイドラインが欧州委員会によって示されているにも関わらず、国際的に不可欠な労働者である船員のEU域内移動の扱いに一貫性がない、EUのシェンゲン協定及びそのビザ規定の問題について議論した。 

この他の事項として、アジア船主は、世界の海運業界のなかで主要な地位を築いており、より安全でより環境的に堅実なシップリサイクルを推進していく上でも重要な役割を担っていることを認識した。

SRC委員長のBronson Hsieh氏は、「『2009年の船舶の安全かつ環境上適正な再生利用のための香港国際条約』(シップリサイクル条約)を履行するためのガイドラインが、現在、IMOの海洋環境保護委員会(MEPC)によって作成中である。」と述べた。同氏はさらに「2011年3月現在、フランス、オランダ、イタリア、セント・キッツ・ネイビスおよびトルコの5カ国が同条約に署名していることからも、主要なシップリサイクル国政府はシップリサイクル条約の批准に向けた検討を開始するべきだ。」と付言した。

工藤氏は、「太平洋航路において、船社は厳しい市況のなかで燃料油コストの増加に直面している。船社が同航路で適切にコストを回収できなければ貿易業界全体にとって懸念材料となる。このような状況が続けば、増大する貿易貨物を輸送するために必要な船社の継続的投資能力に影響を及ぼしかねない。」との自身の見解を付言した。

国際財務報告基準(IFRS)におけるリースに関する会計基準改定案について、ASFは定期用船契約をリースと見なすべきではないとの立場を明確にした。

ASF出席者は、東日本大震災の被害者に対して深い哀悼の意を表明した。日本船主協会会長の宮原耕治氏は福島原子力発電所からの放射能漏れについて、「日本の復興作業への阻害を最小化し、海運業界の円滑な運営を確保するため、我々は関係者に対し、根拠のない噂をもとに対応するのではなく、日本政府やIMOなどの当局が発表する公式かつ正確な情報を十分かつ合理的に評価した上で対応することをお願いする。」と強調した。

豪州船主協会会長のNoel Hart氏が第21回ASF総会議長に選任され、またインド船主協会会長のS. Hajara氏が同副議長に選任された。任期は2011年5月25日から2012年の次回ASF総会までとなる。

注1) ‘The Economic Cost of Piracy’Oceans Beyond Piracy
注2) ICC IMB Piracy Reporting Centre

以上

≪問合せ先≫
ASF事務局長 園田 裕一氏 (Mr Yuichi Sonoda)
電話:+65-6325 4737
Email:information@asf.com.sg
Website : www.asianshipowners.org

注 :
アジア船主フォーラム(ASF)は、各国船主協会から成る任意組織であり、その目的は、アジア船主業界の利益を促進することである。 ASFは、世界商船船腹の約50%を代表すると推定されている。

ASFは以下8メンバー船協で構成される。

ASFは以下8メンバー船協で構成される。

オーストラリア船主協会 (ASA)
中国船主協会 (CSA)
アセアン船主協会連合 (FASA)*
香港船主協会 (HKSOA)
インド船主協会 (INSA)
日本船主協会 (JSA)
韓国船主協会 (KSA)
台湾船主協会 (NACS)
*アセアン船主協会連合 (FASA)の構成
フィリピン船主協会 (FASA-FSA)
インドネシア船主協会 (FASA-INSA)
マレーシア船主協会 (FASA-MSA)
ミャンマー・ファイブ・スター・ライン (FASA-MFSL)
シンガポール船主協会 (FASA-SSA)
タイ船主協会 (FASA-TSA)
ベトナム船主協会 (FASA-VSA)

ASF総会までの間は、5つの常任委員会により継続的活動が行われている。

船員委員会 (SC : Seafarers Committee)
シッピング・エコノミックス・レヴュー委員会 (SERC : Shipping Economics Review Committee)
船舶保険・法務委員会 (SILC : Ship Insurance and Liability Committee)
航行安全・環境委員会 (SNEC : Safe Navigation and Environment Committee)
シップ・リサイクル委員会 (SRC : Ship Recycling Committee)

  • オピニオン
  • 海運政策・税制
  • 海賊問題
  • 環境問題
  • 各種レポート
  • IMO情報
  • ASF情報
  • 海事人材の確保