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プレスリリース

2009年6月17日
社団法人日本船主協会

日本船主協会 第62回通常総会 宮原会長挨拶

この度、皆様のご推挙により、会長職を務めることになりました宮原でございます。何分非力の身でございますが、皆様のお力添えを賜り、大任を果たして参る所存ですので、ご指導、ご協力のほど、何とぞよろしくお願い申し上げます。
 前川前会長におかれましては、トン数標準税制の導入およびソマリア沖海賊対策のための海上自衛隊派遣を始めとして、数々の重要課題に歴史的な成果を残されました。加えて、これらの重要課題への対応を通じ、国会や政府の関係の皆様方、ひいては広く国民の皆様に海運への理解を深めていただけたのは、前川前会長のご努力の賜物であり、この2年間のご苦労・ご尽力に対し心より感謝申し上げます。今後も、引き続きご指導賜れば心強い限りです。
 また、常勤副会長として大きな課題に取り組んでいただいた飯塚 前副会長にも、そのご功績に対して厚く御礼申し上げます。
 さて、昨年秋の米国の金融危機に端を発した世界経済危機は、わが国および世界の実体経済に前例のない深刻な影響を及ぼしております。生産から消費に至るあらゆる経済活動が大きく落ち込み、そのグローバルチェーンを結ぶ海運業界も極めて厳しい状況に直面しています。
 昨年まで数年間の好況から一転、日本船主協会が発足して以来経験した事のない事態でありますが、そのような状況の中、引き続き業界として健全な発展を遂げ、わが国及び世界の経済活動を支える重要なインフラとしての役割を果たすために、私が特に重視しておきたい点をいくつか申し述べます。

第一に、国際競争力の更なる強化です。
 この世界同時不況の下、外航海運の国際競争は従来にも倍して厳しさを増すことを覚悟せねばなりません。国際競争力の強化のためには、まず、各社それぞれの自助努力が求められることは言うまでもありませんが、日本船主協会としても、必要な諸施策の実現に向けて、努力を重ねたいと考えます。
 まず、昨年5月に可決・成立したトン数標準税制につきましては、平成21年度から実施に移されたところでありますが、この制度が円滑に実施されるよう関係者と共に努力致します。又、本税制の内容を国際標準に近づける為、更なる改善を求めて行きたいと考えます。
 また、「国際船舶に係る登録免許税の軽減措置」や「中小企業投資促進税制」を始めとする今年度末で期限を迎える現行海運税制の維持・改善を図るほか、諸税の更なる負担軽減のため、政府・国会等関係方面と調整を進めて参ります。
 加えて、この経済危機の下、金融情勢の変化に対し一層の注意を払うと共に、安定した船隊整備の実施のためには、低利の長期安定資金を確保できる政策金融が不可欠であることを訴えていく所存です。

第二に船舶の安全運航の確保です。昨年一年間でソマリア沖・アデン湾において海賊に襲撃された船舶は世界全体で111隻に及びました。本年3月に自衛隊法に基づく海上警備行動が発令され、自衛艦2隻によって護衛活動が行われておりますが、その護衛活動に守られた船舶は 6月15日時点で85隻を数えました。現在、国会においていわゆる海賊対処法案の審議が行われていますが、引き続き関係官庁等と密接に連携を図り、この海域を航行する船を含め、全ての船舶の安全性が確保されるよう努めていきます。

第三に環境保全の推進です。なかんずく地球温暖化防止対策に関しては、 IMOにおいて活発に検討が行われている温室効果ガスの排出抑制策について、関係の方々と連携し、外航海運の特徴を踏まえた公平かつ実効性のある削減対策が構築されるよう努めてまいります。ご高承の通り、外航海運は「海運自由の原則」によって、先進国/発展途上国の区別なく、相互に自由に活動をしております。こうした国際海運の特殊性に照らせば、規制はすべての船舶にとって一律に等しいものでなくてはなりません。現在、ポスト「京都議定書」の合意に向けた審議が進められていますが、国際海運からの実効性のある温室効果ガス削減対策の策定については、世界の海運業界の実態を踏まえ、IMOの場で扱われるべきと考えます。

第四に顕在化しつつある海技者の不足の問題への対応です。
 トン数標準税制の導入を背景とした日本籍船の着実な増加が見込まれる中、各方面で顕在化しつつある日本人船員・海技者の質的・量的な不足に対処するべく、教育機関や関連団体等への働きかけを行いながら、次世代の人材の確保に努めて参ります。 また、多くの優秀な外国人承認船員を確保するため、国土交通省など関係の方々との調整を進め、承認試験の民間委託や 海技資格付与講習の更なる合理化・簡素化の実現を図って参ります。

第五に国際船員問題への対応です。
 日本商船隊に乗り組む外国人船員の問題については、引き続き国際船員労務協会との連携強化を図りつつ、IBF交渉への支援体制を敷きながら、船員居住国の生活水準や経済状況、及び船員需給関係が反映された妥当な賃金レベルが実現するよう努めます。この問題への取り組みに当たっては、アジア船主フォーラムなどの場を活用して、海外の船主とも積極的に協調を図って参ります。

第六に水先制度改革の推進です。
 水先制度の抜本改革を実現するため、改正水先法に基づく各種施策が平成19年4月より実施され、上限認可・届出料金制度へ移行し、指名制も導入されましたが、現状においてはユーザーの意向を反映した多様な料金設定が行われるには至っていない状況にあります。引き続き、交通政策審議会海事分科会船員部会の下に設置された水先小委員会等での議論において、安全性を確保しながら、水先業務運営の透明性確保や競争原理の導入など必要な改善を求めて参る所存です。

最後に内航海運に係る問題について触れさせていただきます。
 内航海運は、昨今の景気後退により大幅に荷動きが減少しており、運賃および用船料の下落、船腹過剰などへの対応が喫緊の課題になっています。日本船主協会としては、日本内航海運組合総連合会と協調し、内航海運の活性化対策を推進致します。内航業界に影響を及ぼす可能性のある各種条約や関係国内法改正、税制改正などについて、内航海運事業者の皆様の意見反映に努めて参ります。
 加えて、内航海運においても、高齢化等に伴う船員確保対策が引き続き重要な課題となっております。外航海運の人材資源確保対策と連携し、対応して参ります。
 本日、会長就任に当たり、困難な状況下ではありますが、我々日本海運が引き続き日本経済を、ひいては世界経済を支える屋台骨たりうるよう、これまで申し述べました数々の重要課題に全力で取り組む決意を新たにしているところです。本日ご来席の皆様をはじめ関係の皆様の ご指導 と ご支援を賜りますよう 心よりお願い申し上げ、会長就任のご挨拶とさせていただきます。

以上
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