3・3 アジア船主フォーラム

 

 

33アジア船主フォーラム総会

 

14回アジア船主フォーラム(ASF)総会が、2005510日に豪州船主協会の主催により豪州ゴールド・コーストで開催された。同総会には、アジア7地域、12船協(日本、韓国、中国、台湾、香港、ASEAN(インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)、豪州)から137名の代表が出席し、当協会からは草刈会長はじめ15名の代表が参加した。資料3-3-1-1参照

ASFは、1992年に第1回会合を当協会主催で開催して以来、メンバー国/地域の船主協会が北から南の順で議長を回り持ちしながら毎年開催しており、毎年の年次総会の間に5つの”S”委員会(シッピング・エコノミックス・レビュー、シップ・リサイクリング、船員、航行安全および環境、保険法務)が夫々の中間会合を開催している。

今回の会合では、まず各5-S委員会が個別早朝会合を開催し、その後の本会合で各委員会から主な活動報告が行われた。

また、510日の本会合に先立ち、59日にはASF代表と海事団体(ICS, INTERTANKO, INTERCARGOBIMCOは欠席))との対話が開催され、意見交換が行われた。

本会合では、最近の諸問題について率直かつ活発な意見交換が行われた後、共同声明(【資料3-3-1-2参照)が採択された。

共同声明においてASFは、昨年12月に起こった津波災害以降小康状態にあったマラッカ・シンガポール海峡における海賊の発生件数が以前の水準に戻ったことに強い懸念を表明するとともに同海峡における国際テロリズムの可能性についても強い懸念を表明し、関係国が互いに協力し、同海峡を航行する船舶の安全を確保するために効果的な方策を実施するよう促した。この点は今回の会合において特に強調すべきポイントとして当協会の要請により前文に盛り込まれたものである。

 次回第15回会合は、2006528日〜30日に当協会の主催により、日本で開催される。

 

 

332 各委員会における検討状況

 

●シッピング・エコノミックス・レビュー委員会(SERC)中間会合

ASF5つの”S”委員会の1つであるSERCShipping Economics Review Committee)は、その中間会合を以下の通り開催し、当協会企画部が事務局として活動した。

 

17回中間会合(200544日 於 ペナン)

まず同会合に先立ち、アジア荷主協議会(ASC)とSERCの初めての対話会合が開催された。同対話は、第16回中間会合(200411月、於台北)で、アジアの荷主と船社の建設的な関係を構築することが確認されたことを受け(2004年報3.4.1 参照)、今回初めて開催することとなったもので、両団体が夫々のメンバー・組織・目的などを紹介した後、荷主と船社間の共通懸念問題につき活発な意見交換が行われた。双方の出席者には、アジアの荷主と船社の間で良好な関係を構築する意欲が見られ、誠実な対話を通じ相互の信頼と理解が深められ、今後は必要に応じて随時対話を開催することが確認された。同対話のジョイント・プレス・リリースは資料3-3-2-1、出席者は資料3-3-2-2の通り。

 

上記対話に引き続きSERC会合が開催され、SERC委員長の草刈当協会会長(当時)(日本郵船会長)をはじめASFメンバー船協から6カ国/地域の代表21名が参加した。(出席者は資料3-3-2-2SERC側出席者と同一)

同会合では、定期船部門について増大するコスト要因に鑑み、各船社および認可された船社間協定にとって、有効かつ建設的な対話による関係荷主との協議に取り組む必要があることなどを確認するとともに、ドライバルク/タンカーの市況動向、独禁法適用除外問題など海運を取り巻く重要事項について議論された。また、2001年から委員長を務めてきた草刈委員長が退任し、後任に芦田昭充当協会常任理事(商船三井社長)が就任することが了承された。会合で採択された了解事項は資料3-3-2-3の通り。

 

18回中間会合(20051213日 於 東京)

同会合では、芦田当協会常任理事が新委員長として議長を務め、ASFメンバー船協から6カ国/地域の代表22名が出席した。(資料3-3-2-4参照

 

会合では、世界のマクロ経済、太平洋およびアジア域内コンテナ航路の需給見通し、燃料油価格の高騰などコスト増大問題、ドライバルク/タンカーの市況動向、独禁法適用除外問題など海運を取り巻く重要事項について議論された。会合で採択された了解事項は資料3-3-2-5の通り。

 

 

 

アジア船主フォーラム船舶保険・法務委員会(ASF SILC

 

アジア船主フォーラム船舶保険・法務委員会(ASF SILC)第10回中間会合が2005311日に香港において開催された。

同会合には、アジア8船主協会から17名が参加し、日本からは同委員会委員を務める鷲見副会長(新和海運相談役)の代理として、森新和海運総務グループ次長、および事務局より伊藤企画部課長代理が参加した。

今次会合では、George Chao委員長(香港船主協会)の下、欧州・米国・カナダにおける船舶に起因する海洋汚染の取締り規制、国際油濁補償制度の見直し、国連国際商取引委員会(UNCITRAL)・IMO法律委員会等における海事関連規則・条約の審議状況の確認、およびそれらに関する意見交換が行われたほか、PI保険、船舶保険市場に関する全般的意見交換等が行われた。

特に、船舶に起因する海洋汚染に対する取締り強化策として、欧州議会が不明確な要件に基づく刑罰規定を設けた指令案を採択したこと、また欧州諸国のなかには、自国海域を航行している船舶に対し、極めて根拠が希薄な証拠に基づき海洋汚染の取締りを行っている国もあること、更には米国やカナダでも独自の規制強化の動きがあることなどに対し、各委員からは国際条約に整合しないこうした地域規制は世界的な貿易業務に携わる船舶の運航に混乱と障害を招くだけであるとして強い懸念が繰り返し表明された。

この他、国際的な海事規則、条約の改定や草案の審議については、今後とも当委員会を通じてアジア船主のポジション形成に努めていくことを確認するとともに、当委員会の見解を取り纏めた共同声明(資料3-3-2-6)を採択した。

 

 

 

アジア船主フォーラム(ASF)シップ・リサイクリング委員会(SRC)の第8回中間会合

 

アジア船主フォーラム(ASF)シップ・リサイクリング委員会(SRC)の第8回中間会合が、2005228日と31日に、中国の広州において開催された。

今会合には、中国、香港、インドネシア、日本、台湾(SRC事務局)、の船主協会が出席したほか、オブザーバーとして中国の造船、船舶解撤協会、船級協会、ならびに台湾の造船業界と船級協会が参加した。当協会からは同委員会副委員長の鈴木邦雄副会長(商船三井会長)の代理として、当協会安全環境委員会解撤幹事会の井上登志仁幹事(商船三井経営企画部部長代理)他が参加した。(資料3-3-2-7参照

会合はFrank F. H. Lu委員長(台湾船主協会)が議長となり議事が進められ、参加各国船協から船舶リサイクル問題に関わる報告が以下のとおり行われた。

まず、当協会よりIMO、バーゼル条約等の国際会議の動き、ならびにバーゼル条約を船舶に適用した場合の問題点、等につき説明を行った。続いて、中国造船協会より、中国造船業界の規模、2004年の建造結果など同国の造船業界の現状につき報告(資料3-3-2-8参照)があった。また、中国船主協会を代表してCOSCOより同社では自社船を解撤する際に、解撤ヤードに対し、解撤作業前の事前洗浄など、環境保全/労働安全の確保を要求している等報告があった。さらに、中国解撤協会より中国解撤業の歴史と今後の展望等につき報告(資料3-3-2-9参照)が行われるとともに、香港船主協会より、同船協は、ICSBIMCO等で構成するシップリサイクリングワーキンググループ(WG)での議論にも積極的に参加しており、同WGの活動を支持している旨報告があった。

報告に引き続き、シップリサイクル問題の改善には、関係者の協調努力が必要であるとともに、バーゼル条約のような既存の規制ではなく海運、リサイクル業界の特質を考慮したIMOガイドラインの実施が効果的であることを確認したほか、世界有数の海運、造船、解撤業を持つアジア地域の声をより国際会議での議論に反映させるべきとの認識で一致し、これらを踏まえた共同声明(資料3-3-2-10参照)が採択された。